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「ユイさん、大好きです」“マンCを熟知”なでしこ新監督ニールセンが就任会見で評価も…長谷川唯と藤野あおばがバルサ戦完敗で見せた素顔
posted2024/12/31 11:09
text by
中島大介Daisuke Nakashima
photograph by
Daisuke Nakashima
なでしこジャパンは12月、初の外国人監督としてニルス・ニールセン氏を迎えた。
グリーンランド出身の同氏はデンマークの世代別代表監督などを務めたのち、マンチェスター・シティ女子チームのテクニカルダイレクター(TD)を任されていた時期もある。そんな経歴もあってか東京で行われた就任会見で「ユイさん、大好きです」とユーモアを交えながらシティに所属する長谷川唯ら日本人選手を評価していたという。そんな中で12月18日、UEFA女子チャンピオンズリーグ(WCL)グループD最終節、FCバルセロナ対マンチェスター・シティ戦の撮影に向かった。
長谷川、藤野ら擁するマンCが“最強”バルサ女子と
日本代表でもある長谷川唯、藤野あおば、山下杏也加、清水梨紗が所属するシティはここまで無敗、首位で今節を迎えた。
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対するバルサには、2年連続でバロンドールを受賞のアイタナ・ボンマティが所属している。また一昨年まで同じく2期連続受賞のアレクシア・プテジャスもおり、国内リーグ5連覇、WCL2連覇を果たす強豪である。
すでにグループ突破を決定付けているチーム同士の対戦は、首位突破をかけての争いとなった。この両チームは開幕節でも対戦しており、シティが2-0で勝利している。シティ戦以外負けなしのバルサが、得失点差では大きく上回っており、2得点差以上の勝利で逆転首位となる対決だった。
会場に約3万人…女性ファンの姿も多かった
キックオフは18時45分、会場はバルセロナ市内モンジュイックの丘にあるオリンピックスタジアム。バルサ女子の試合は、通常郊外にあるバルサ練習施設に隣接するヨハン・クライフスタジアムで行われるが、この日は男子の試合で使用される、キャパの大きいスタジアムが選ばれており、バルサ側の気合いの大きさを示している。
平日にしては早めの時間帯だったこともあり、客の入りは遅かったが、発表された観客数は2万9007人で、スペインにおける女子サッカーへの関心の高さを感じさせた。
残念なことに、現在バルサのホームスタジアムであるカンプ・ノウは改修工事中である。過去には女子の試合で9万人を超える観客動員を見せており、そんなアウェイ感満載の雰囲気で日本人選手の撮影ができなかったのは心残りか。
代替的に使用されているモンジュイックは、サッカー専用スタジアムではないためピッチと観客席がかなり離れているが、両チームメンバーがアップに現れると、最前列から大きな歓声が飛んだ。その多くは、バロンドーラーであるアイタナに向けられたもので、やはり男子サッカーに比べて女性ファンの姿が多く目につく。
三笘のような藤野のドリブル、長谷川の柔らかなタッチ
シティ側にカメラを向けると、長谷川、藤野が先発組、山下は控えとなった。また清水は、オリンピックでの負傷により招集外だった。
先発の長谷川と藤野は時折言葉を交わし笑顔を浮かべるシーンも見られたが、CLのロゴの入ったビブスを着用し、激しくボールを奪い合う姿があった。
またサイドでの起用が予想される藤野は、ボールを受けると三笘薫を彷彿させるドリブルからのクロスを入念に行った。一方の長谷川は、中盤からボールの配球やシュート練習に励み、またリフティングをしながら走るなど類い稀なボールテクニックを披露した。
試合はキックオフ直後から、バルサが圧倒的に支配する展開となる。前半終了時のスタッツで66%に達したポゼッションを見せただけでなく、シュート数でもバルサ14に対しシティ2と、まさにバルサが圧倒した。
バルサの分厚い攻めもあって守備に追われてしまった
中盤では、アイタナと長谷川のマッチアップが繰り広げられる場面が多かったが、バルサに押し込まれた展開が続く中、必然的に長谷川のポジションも自陣深くに押し込められる時間が続いた。アイタナだけでなくバルサの前線選手にも対応せざるを得ず、守備的MFとしての働きに追われてしまった。
藤野は前線で相手守備ラインへのプレッシングを続けたが、バルサのパス回しを食い止めることはできず、また相手陣内でボールが回ってくることがほぼなく、持ち味のドリブルを見せることができなかった。
とはいえシティも耐え凌ぐだけでなく、ハイラインのバルサに対し、前線のジェス・パークが自力でシュートまで持ちこみ、また相手陣内深くで、長谷川、藤野のコンビネーションから抜け出しチャンスをつくりかける場面もあった。逆境とはいえ、シティも1つのチャンスでボールを奪い切る力強さを見せていた。
GKキアラ・キーティングのファインプレーもあって――なんとかバルサの猛攻を凌いでいたシティだったが、前半終了間際の44分、バルサの波状攻撃から最後はクラウディア・ピナに混戦のこぼれ球を蹴り込まれ得点を許してしまった。この1点は、圧倒的支配にもかかわらずゴールを奪い切ることのできていなかったホームチームには歓喜と安堵を、あと一歩のところを持ち堪えることのできなかったアウェイチームには、大きな絶望となったはず。