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「森保さんの厳しさに惚れた」サンフレッチェ広島一筋21年…青山敏弘(38歳)が語った2人の恩師と引退の真意「僕はずっとこの右足で生き残ってきた」
posted2025/01/16 17:00
text by
二宮寿朗Toshio Ninomiya
photograph by
Takuya Sugiyama
発売中のNumber1111号に掲載の[21年の現役生活を終えて]青山敏弘「不屈のパスを、もう一度」より内容を一部抜粋してお届けします。
人がいなくなったピッチに、ボールを叩く乾いた音だけが響いていた。
11月下旬、安芸高田市サッカー公園に寒風が吹きすさぶなか、21年間変わらないいつもの光景があった。サンフレッチェ広島ひと筋、スパイクを脱ぐことを決めた後も青山敏弘は居残りでずっと一定の音とリズムでボールを蹴り続けた。
若手、そしてクラブOBの駒野友一とパートナーを替えながらインステップキック、インサイドキックを利き足の右足だけで一つひとつ軌道を確認するように放っていく。
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「僕はずっとこの右足で生き残ってきましたから。最後の最後までこの右足を信じたい、という思いで蹴っていました」
いつもよりちょっとばかり熱が入っていた。リーグ戦は残り2試合。首位ヴィッセル神戸を勝ち点3差で追う2位につけ、今年オープンしたエディオンピースウイング広島での今季最終戦を目前に控えていた。この日、指揮官のミヒャエル・スキッベからベンチメンバー入りを告げられた。対戦相手は恩師ミハイロ・ペトロヴィッチ率いる北海道コンサドーレ札幌。運命を感じずにはいられなかった。
反骨の歴史
新シーズンを迎えるにあたってクラブと話し合いを持ち、今季限りの引退が決まっていた。だが内心、その決定を覆してやろうと日々の練習でアピールしてきた。
「このクラブで、このタイミングで辞めるのが一番いいし、幸せなこと。ただずっと(引退を)覆したいと思ってきた。最後の悪あがきじゃないけど、自分に一番期待しているのは自分なんでね。ここで力を出せるんじゃないかなって信じているんです」
追い込まれるたびに、ひと回り大きくなってきた。このままで終わらせないという反骨こそが青山そのものの歴史である。