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「誹謗中傷はかなりありました」箱根駅伝予選落ち…“最多優勝14回の名門”と2年生スーパーエースが絶望した日「なんで自分はこうなんだろう」
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NumberWeb編集部Sports Graphic Number Web
photograph byNanae Suzuki
posted2025/01/01 17:01
号砲の時が近づく箱根駅伝。しかしその場にたどり着けなかったチーム、選手にもドラマはある
4年連続のシード落ちで迎えた2016年、低迷打破へOBの藤原正和監督が就任したものの、全日本大学駅伝の予選会で落選。悪い流れを断ち切るため、当時1年生だった舟津彰馬を駅伝新主将に、同学年の田母神が副主将に据えるドラスティックな変更を加えた。
「舟津は駅伝でも力があったし、頑張ってチームをまとめようとしていましたけど、やっぱり経験の差はありました」
予選会では必死の走りを見せたものの、学校名が呼ばれたのは本戦出場圏内の10位ではなく、11位。立川の地で箱根への道は閉ざされた。
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「もし先輩方に何か言う人がいたら、自分が受けて立ちます」
予選会を終えた直後、19歳の舟津はキャプテンの自覚をもってこう話した。しかし実際には……誹謗中傷がかなりあったという。その内容が冒頭で取り上げた言葉である。
中央大はその悔しさを経て、翌年の第94回大会から7年連続で本大会出場を果たし、吉居大和らを擁した第98回では総合6位、第99回では総合2位まで復権してきた。総合13位に終わった第100回を経て10月に行われた予選会では全体6位で本戦出場を決めたチームは、伝統の「Cマーク」と赤タスキを胸に、2年ぶりのシード権獲得を目指す。
なんで自分はこうなんだろう…
<証言2>
なんで自分はこうなんだろうなって思います。
(前田和摩/NumberWeb 2024年10月21日配信)
https://number.bunshun.jp/articles/-/863448
◇解説◇
2024年の箱根駅伝予選会は、出場圏内と圏外の分水嶺となる10位、11位が「上位10人の合計タイムが1秒差」で決まる結末となった。そこで涙をのんだのは東京農業大学である。
応援団による「大根踊り」が名物の東農大だが――2023年度の第100回大会、10年ぶりとなる本戦出場を決めた際に注目を集めたのは、スーパールーキーと称される前田だった。2023年の予選会では日本人トップとなる個人9位の記録を残し、文字通りチームを牽引。本戦では故障の影響もあって7区で区間13位に終わったものの、2年生となった今季は5月のパリ五輪代表選考会を兼ねた日本選手権1万メートルで、日本歴代5位となる27分21秒52の好記録をたたき出している。
しかしそこから5カ月後……箱根駅伝予選会ではコンディション不良(肺気胸)によってメンバー外となった。
「監督には無理をさせないということで判断していただきました。早い内に今年は無理をせずにってことになったので……。まあ、そうですね。もうみんなに託す、任すってかたちになりました」
全く走れない状況ではなかったが、将来を見据えての判断だったことがわかる。それでも小堀隆司記者の取材によると、前田はチームメートがすすり泣く横で、気丈に取材対応をしていたという。
なお2025年の箱根駅伝は、優勝経験校である明治大や東海大などを筆頭にした常連校も本戦出場を逃している。東京・大手町のスタート地点に立つこと自体が非常に難しい。それが箱根駅伝の価値をさらに引き上げている。〈箱根駅伝総力特集:つづく〉