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「阿部慎之助を一番警戒していた」25歳の田中将大が“楽天の日本一”のために巨人に投じた渾身の302球「アイツ、最後までいくと言ってます」
text by
永谷脩Osamu Nagatani
photograph byJIJI PRESS
posted2024/12/26 17:02
25日、巨人入団会見に出席した田中将大(36歳)。背番号は「11」に決まった
この回の先頭打者は、同い年で、小学校時代には同じチームに所属した“ライバル”坂本勇人。かつて、「一枚上」と言われた坂本を、田中はここまで完全に抑え切って、見下ろせる存在になっていた。その坂本に甘く入ったストレート左中間に二塁打される。
「田中がカッとなって、アドレナリンを出す時は、得点圏に走者を置いて、三振を取りに行く時なんですよ」
と教えてくれたのは楽天のスコアラー・小池均だが、まさかの二塁打に熱くなった田中は、ボウカーから三振を取りにいき、見事、空振り三振に仕留める。嶋は今シーズンの田中の成長について「何がなんでも三振なんてことは考えていない。でも、三振を狙った時に、三振が取れるんです」と語ったことがある。そして、「もし、本塁打を打たれたら、自分の配球ミスです」と続けた。
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続くロペスに対しては、警戒しながらボールから入り、2-0。その後、150キロ、149キロのストレートをファウルされる。ここで嶋の頭によぎったのは、第2戦の6回2死満塁でロペスを三振にとった内角152キロの快速球だったという。この場面では、ストレートをファウルにされたから、今度は、内角に変化球を投じた。だが、これが甘く入り、ロペスの一打は、レフトスタンドに飛び込む同点本塁打になってしまった。試合後、嶋は「自分のミス」とうなだれたが、田中にしてみれば、自分のコントロールミスの責任を全て背負ってくれる先輩の気持ちは本当にありがたかった。
巨人打線は、今までの鬱憤を晴らすかのように畳み掛ける。寺内はライト前へ、長野は初球をレフト前に運ぶ。重盗は失敗したが、亀井義行が四球を選んで一、三塁。マギーがマウンドに駆け寄って「腕を振れ」と言うが、田中の耳には入らない。高橋由伸相手に力勝負に出てセンター前にはじき返され、3点目を献上。まさかの逆転を許してしまった。
「アイツ、最後までいくと言ってます」
星野監督は7回、120球を越えた所で、佐藤コーチに交代を打診した。だが、佐藤コーチの答えは「駄目です。アイツ、最後までいくと言っています」だった。
9回、逆転タイムリーを打たれた高橋を152キロのストレートで三振に斬って取ったのは田中の意地だったが、球数は160球に達していた。
「最後までマウンドに立ってやろうという気持ちはありました。投げミスが多く、こういう大事なところで出てしまったのは、自分の力のなさです。今シーズン、もっときつい時があったし、コンディションはいつもと変わらなかった。最後は球場がどうやったら盛り上がるか考えました。三振をとれたのはよかった。明日は自分のできることをやりたい」
今年喫した初めての敗北に、田中は珍しく饒舌だった。