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「長野(誠)さんの言葉は意識しています。でも、ひとつだけ…」SASUKEのエース“サスケくん”こと森本裕介(33歳)が語った「完全制覇」への想い
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byNanae Suzuki
posted2024/12/25 17:01
SASUKEで2度の完全制覇経験を持ち、番組の大トリを務めることも多い森本裕介。33歳になった「サスケくん」の軌跡とは
池に落ちた体はすぐに乾いても、その傷口まですぐに塞がることはない。最後の一人に残ることが多い森本も、ファーストステージで落ちて応援する側に回ったとき、痛みを抱えながら応援の声をかけ続けてくれた周りの人たちへの敬意が湧き上がってきたのだ。
「1年間頑張ってきていい成績が出せずに終わって悔しいのに応援してくれている。その気持ちがわかったから、みんなすごいんだなと思いましたし、自分もそうあるべきだろうと痛感しました」
そこからSASUKEに臨む意識も少し変わった。最初の頃はただひたすらにチャレンジャー。自分のため、自分の夢を叶えるために頑張っていた。だが、1回目の完全制覇以降は応援の数も飛躍的に増え、その期待を背負い、力に変えることができるようになった。
レジェンド・長野誠と微妙に異なる「完全制覇」観
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その変化を知ると、森本がのめり込むきっかけとなった長野の完全制覇を思い出す。あの時、ファイナルステージ4度目の挑戦で悲願を成就させ、地上22.5mのゴール地点で実況アナウンサーに聞かれた長野は言った。
「ゴールには何がありましたか?」
「ここには本当は何もないんです」
完全制覇に重きを置いてきたのではない。SASUKEオールスターズの仲間と一緒にSASUKEに挑戦していることが楽しいのだと。長野のSASUKEに対する美学を端的に表した名言だった。
森本は一番尊敬する人だという長野から直接、「完全制覇を見るんじゃなくて、今この瞬間、仲間と過ごす楽しさや完全制覇に至るまでを楽しんだ方がいいよ」と言われたこともあるという。
「それは今の僕にすごく生きています。プロセスをすごく大切にして、頑張るし、楽しむ。長野さんから頂いた言葉を意識して過ごしてきました」
ただ、ひとつだけ長野の言葉に背いているのだと森本は言った。
「僕はずっと完全制覇を見てきたんです。周りの方の応援も増えましたけど、あくまで自分の夢を叶えたいと思ってきた。ワクワクした気持ちで夢を追いかけてきました。そこへのこだわりはずっと変わらなかったですね」
完全制覇でSASUKEに惹きつけられ、完全制覇で走り出した男のこだわり。至極穏やかそうにみえて、そこだけは徹底して自己中心的。完全制覇に取り憑かれた男のブレない芯である。
<次回へつづく>
「SASUKE2024 第42回大会」
TBS系 12月25日(水)よる6時~放送予定