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「オグリキャップは燃え尽きてしまったのか」17万人超の観衆、歩くことも困難で…“伝説の有馬記念”の異様な雰囲気「馬券オヤジも野次を飛ばさず…」
text by
島田明宏Akihiro Shimada
photograph bySankei Shimbun
posted2024/12/18 17:01
1990年の有馬記念、武豊を背にラストランで“奇跡の復活”を果たしたオグリキャップ。中山競馬場は「オグリコール」に包まれた
様々な人間たちの強い思いが渦巻くような熱気となり、有馬記念のパドックを特別な空間にしていた。あとになって思ったのだが、あの異様な雰囲気のなかを数十分歩かされた時点で、勝ち負けになる馬は選別されていたのだろう。鋼のような精神力の持ち主でなければ、押しつぶされずにゲート入りすることはできない。「奇跡」の主役として、オグリはこの時点で競馬の神様に選ばれていたのだ――。
「こんなことが本当に…」奇跡のラストラン
2走前の天皇賞・秋で6着となり、キャリア30戦目にして初めて掲示板を外した。そして前走のジャパンカップでは11着に惨敗。
これほど極度の不振にあえいでいたのに、オグリキャップのラストランは価値ある一戦になってほしい――という人々の願いが、単勝5.5倍の4番人気という数字になっていた。
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私もそう願ったひとりだった。
オグリは見事な走りで私たちの願いに応えた。スローな流れのなか好位で折り合い、4コーナーで外から先頭に並びかけ、鋭く伸びて優勝。鮮やかに有終の美を飾った。
中山競馬場に、「オグリコール」と「ユタカコール」が響いた。
なお、2着メジロライアン、3着ホワイトストーンというのは、「ナカノコール」の日本ダービーと同じだった。
何度振り返っても、「こんなことが本当にあったんだなあ」とつくづく思う「奇跡のラストラン」だった。まさに夢のようなグランプリで、文字どおりのドリームレースであった。