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「イヤイヤ期に来ていて…」フィギュア世界女王・坂本花織が“表彰台に乗れただけ”でホッとしたワケ「自分の性格に救われている部分も」
text by
野口美惠Yoshie Noguchi
photograph byAFLO
posted2024/12/15 06:30
フィギュアスケートGPファイナルでは思ったほどスコアが伸びず銅メダルだった坂本花織
「今回、ショートはジュニア女子の優勝者(島田麻央)の方が点数は高かった。でもフリーになると、コンポーネンツの部分でシニアの選手は今まで積み上げてきた部分や、スケーティングスキル、表現というものがある。ショートは技術が詰まっている分、シニアとジュニアで差が出にくくなりますが、フリーはステップとコレオがある分、やっぱりシニアが差を出せると感じています」
年齢を重ねるからこその強みもある、ということを強調する。そして、優勝した25歳のアンバー・グレン(米国)のことを語り始めた。シニア10年目にしてトリプルアクセルを降りた、遅咲きのヒロインだ。
「(9月の)ロンバルディア杯に一緒に出たのですが、そのときに初めて国際試合で優勝したと話していたので、びっくりしました。『金メダルが欲しかったのに、なんでトロフィーなの!』と叫んでました(笑)。そのあとGPシリーズが始まって、演技が安定しているし『GPファイナルに絶対来るな』と思っていたら優勝して。やっぱり年齢と経験があるからこその勢いや底力がすごいな、というのが伝わってきました」
グレンが頭角を現したことで、来季のミラノ・コルティナダンペッツォ五輪に向けまた新たな戦略図が出来上がってくる。今季のGPを欠場しているルナ・ヘンドリックス(ベルギー)も来季は復帰してくるだろう。
「アンバーも、ルナも、(樋口)新葉も、(三原)舞依ちゃんも。20代なかばの選手が国際試合でしっかり戦えているのが、やっぱり良いなと感じています。年齢を積み重ねていくごとに、戦う上で気持ちが乗らない試合や、コンディションが良くない時期の頻度が増していきます。それでも近い年齢の人たちが頑張っているのを見て、『自分も頑張らなきゃ』っていう気持ちになります」
「自分の性格に救われている部分も」
精神的にも身体的にも、変化を感じる24歳。それでも、3度目のプレ五輪シーズンだからこそ、落ち着いて戦略を立てる。
「常に試合に出続けるのは本当に大変なこと。でも自分は恵まれていて、大きな怪我もないし、自分の性格に救われている部分もたくさんあります。そこまで気持ちが落ちきらずにすんでいるから、競技を続けていられる。今季あえて休むことも踏まえて、みんなが本気で五輪を狙いに来ているのを感じています。やっぱり来季が本当に大事なシーズン。しっかりとそこ(五輪)を見ていきたいです」
今季の初めに坂本が語ったのは、今季と来季を繋げて考え、「最終目標を五輪に置く」ということ。そのために試行錯誤し、経験を蓄積する。この銅メダルは必ず五輪の頂点へ繋がると信じて、進んで行く。