- #1
- #2
プロ野球PRESSBACK NUMBER
「お前、トレードって出てるぞ」“度会トレード”報道に先輩選手が猛抗議…ヤクルトを支えた「日本一のムードメーカー」DeNA度会隆輝の父の“愛され伝説”
text by
佐藤春佳Haruka Sato
photograph byJIJI PRESS / SANKEI SHIMBUN
posted2024/12/18 11:03
DeNA度会隆輝と現役時代の父・度会博文さん(右)
あえて野村監督の近くに座り…
試合に出ていない時は、ベンチで野村監督の近くに座りその言葉に耳を傾けた。
「ちょっとした言葉を聞くだけでも自分の財産になると思っていました。監督は威圧感があったし、怖かったですよ。あの古田さんでさえベンチで怒られている姿を見たことがある。でも意外とお茶目なところもあって、他愛もないことを喋ったり仲良くさせていただいたんです。
なかなか打てない試合展開の時、頭に来たのか『お前ら、最後は気合と根性なんだよ!』ってボヤいてたことも印象深いです。データを大事にする監督でもそう言うんだから結局は気合と根性が大事だよな、と妙に納得しましたね」
「この言葉をお前にやる」
ADVERTISEMENT
結果的にヤクルト監督としてラストシーズンとなったこの年、度会さんは大切な言葉をもらった。
「念じて努力して花開く」――。
「監督は『念ずれば花開く』という言葉が好きだったんですけど、『度会の場合は念じるだけじゃあダメなんだよ』って。念じて、努力しなきゃダメなんだ。この言葉をお前にやるから、頑張るんだぞ、と言われました」
度会さんはこの年、85試合に出場し205打数54安打。二軍で泥にまみれた4年間の努力がまさに“花開いた”。「念じて努力して花開く」。度会さんはこの言葉をグラブの内側に縫い付け、生涯の座右の銘としてきた。
欠かせない“便利屋”を極めて
98年にブレークを果たしてから、度会さんはチームに欠かせないユーティリティープレーヤーとしての地位を確立していく。野村監督が去り、若松勉監督が就任した99年以降は、主砲のロベルト・ペタジーニの守備固めとしての出番も多かった。
「プロですからもちろん、スタメンで出たいですよ。でもそれが出来ないなら、チームに貢献するためにどうしたらいいのか、どうすれば自分が必要とされるのか、ということを常に考えなければいけない。ベンチスタートならば、試合の状況や流れを見て、先読みをしながら早めに準備をする。どんなポジションも守れるように練習も欠かしませんでした」
面白い声出しに「賞金」
底抜けの明るさで自らムードメーカー役を買って出た。ベンチからひと際通る大声で繰り出すその「声出し」は、ヤクルトの“名物”とも言われた。
「当時のチームはものすごく明るくて、練習中でも試合中でも、何か面白いことを言ったら賞金が出たんです。気の利いた一言とか、みんなを笑わせる声出しをすると、『今の面白い! 200円!』っていう感じでメモ帳につけて。遅刻やポカをしたら罰金もあってだいたいの選手はマイナスになるんですが、僕の場合は声出し効果で収支がプラスになっていたことが多かったです(笑)」