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「ソフトバンクから移籍させてくれ」は本当か? 契約サイン保留直後、リチャードが2度口にした“ある言葉”…じつはプロ野球界の問題「飼い殺し」とは
text by
田尻耕太郎Kotaro Tajiri
photograph byKYODO
posted2024/11/29 06:03
ソフトバンク25歳の大砲、リチャード。契約更改でサイン拒否した理由とは
「言っていいか分からないですけど。まだ話してる途中なので」
――とはいえ、去年の水谷(瞬)選手などを見ていると……。
「そういうのもあります。難しいですね。どうしても誰かの怪我待ちっていうのも嫌ですし。もちろんホークスで頑張るのが一番なんですけど。いろんな思いがあって。後ろも押してた(次の選手の契約更改の時間が迫っていた)と思うし、時間的に。別に全然怒りの保留とかではなくて。まだ話したかった。次回また話をしたいです」
――自分の素直な気持ちは伝えた?
「伝えました。球団もその気持ちを分かってくれていました。ただハンコを押したら1年間頑張らないといけない。契約なので。ただ、この気持ちで押しても。プロなのでそういう気持ちは押し殺さないといけないかもしれないですけど、いろいろあって保留しました」
――次回には。
「僕自身も結果を出してない。今季は一軍で出場15試合ですけど、スタメンは7試合。半分は代打。そういうのをモノにしないといけないですけど。難しいですね」
短い囲み取材で「難しい」という言葉を二度使った。この表現こそ、リチャードがいま置かれている苦境を物語っている。
「メジャーで頂点に立てる」リチャードの苦境
リチャードは二軍のウエスタン・リーグでは今季までに5年連続本塁打王、3年連続打点王を獲得した。同じ沖縄出身で公私ともに親交の深い山川穂高にリチャードのことを問うと「本を出せるくらい、いっぱい喋ることはありますよ」と愛を込めたジョークを飛ばしつつ、ちょっと真剣なまなざしで「ポテンシャルはメジャーリーガー。メジャーでも頂点に立てる」と言った。
だが二軍では無双の活躍をするのに一軍に上がるとサッパリなのだ。もう、それを何年間も繰り返している。2021年に一軍デビューを果たすと34試合出場116打席で7本塁打をマークして長距離砲としての十分な資質は証明してみせたが、翌年は3本塁打と減少し、直近2年間は一軍ノーアーチに終わっている。
毎年、全くチャンスをもらえていないわけではない。ただ、ソフトバンクのチーム状況を思えば、我慢強く起用してもらえるような環境ではない。一塁には今季143試合全てに4番打者で出場して本塁打と打点の2冠王に輝いた山川がどっしりと構え、三塁は先のプレミア12で侍ジャパンの中軸を任された栗原陵矢がいる。リチャードの置かれている立場は確かに厳しいのだ。