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「大谷翔平もフリーマンも、山本由伸を信じていた」パドレスとの第5戦“先発までの内幕”…「ヨシノブ・ヤマモト」がドジャースの救世主になった日
text by
阿部太郎Taro Abe
photograph byJIJI PRESS
posted2024/11/20 11:00
パドレスとの地区シリーズ第5戦、3回のピンチを切り抜け雄叫びをあげる山本由伸
最初に“先発・山本”を明かしたのは大谷翔平だった
なぜか。一つはパドレスに、分析する時間をできるだけ与えたくなかったという見方がある。第5戦には「ブルペンゲーム」か、フラハーティか、山本か。3つの選択肢があった。なるべく、相手を混乱させたいという狙いがあったのだろうか。
もう一つは、山本を会見に出させたくなかったのではという見方だ。ロバーツ監督らドジャース側は、山本が第1戦でパドレスに打たれた原因の一つは、投球の癖を見抜かれ球種を特定されたからではないか、と考えていた。これは今年3月の開幕シリーズから指摘されていたことだ。あくまで推測だが、会見でそのことを記者から追及され、山本に負担を与えたくないと思った可能性もある。
だが、チームの発表より、誰よりも先に山本の第5戦先発をメディアに話したのは大谷だった。ダルビッシュ有との再戦について聞かれ、「明日、個人的には由伸との投げ合いもあるし、楽しみにしている」と答えている。通訳は「可能性がある」という言葉を使って濁したが、大谷ははっきりと言った。
意図的なのか、先発が発表されていないことを知らなかったのかは分からない。ただ、大谷は可愛い後輩である山本の能力を信じて疑っていなかった。第1戦で打たれた後も「次はいい投球をしてくれる」と語っていた。
「日本シリーズの映像を見たんだ」フリーマンの信頼
チームは「ブルペンゲーム」も検討していたが、コンディションを含めて準備できる頭数が足りなかったようだ。山本を先発にして、仮に崩れそうなら、序盤からでも救援を注ぎ込む準備をしていた。
では、第5戦に至るまでの山本はどのような心境だったのか。
「簡単には切り替えられなかった」という山本に寄り添ったのは、チームの仲間だった。サンディエゴへの遠征では、キケ・ヘルナンデスが山本を「お茶」に誘った。およそ2時間、いろんな話をした。「お前を信じている」という言葉に背中を押された。
キケははっきりと断言している。
「由伸について(第5戦前に)多くの質問に答えたが、私の答えは変わらない。チームがこの選手にこれほど高額な契約金を支払ったのは、ドラフトで指名されたからでも、将来偉大な選手になると予測があったからでもない。彼がすでに偉大な選手だからだ」