炎の一筆入魂BACK NUMBER
「よくなったと感じるのは…」打撃投手にブルペン捕手、カープの裏方が明かすリアルな選手評…秋季キャンプの成長株とは
text by
前原淳Jun Maehara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/11/19 11:00
秋季キャンプで成長を見せた二俣。24年シーズンは122打席に立ったが、打率は.196に終わっている
もうひとり、同じ打撃投手に訊いた。来年が打撃投手歴25年目となるベテラン高橋英樹も、元広島の選手。90年にドラフト3位で入団し、3年目には先発13試合を含む23試合に登板。97年には中継ぎとして42試合に登板したが、99年までの実働6年で97試合登板に終わった。00年から打撃投手を務め、広島の歴代打者の成長を後押ししてきた。また、13年のWBCや15年のプレミア12では侍ジャパンをサポートした。
「侍の選手たちは、どこでも打つ。投げた球がチェンジアップみたいになってしまっても、しっかり止まって打ち返せる。前田(智徳)さんがいっぱいいる感覚だね。今の一軍でもアキ(秋山翔吾)とかはきっちり打つ。ここに来ている選手たちはまだできないけど、それは経験だと思う」
打たせることが仕事であるからこそ、打者の変化、成長を肌で感じる。「天才」といわれた前田智徳のすごみも、肌で感じてきた。そんな歴史の証人のようなベテランが挙げたのは、この2年で計1本塁打と伸び悩む林晃汰だった。
「この秋はやっぱり、(林)晃汰がいいんじゃないかな。俺の感覚なんだけど、スイング、ヘッドの感覚がすごくいいなって。ちゃんと捉えているし、タイミングの取り方も良くなっている。本人もちょっと自信になっているんじゃないかな?」
林は21年に10本塁打を記録した左の大砲候補。だが、一軍での出場機会を与えられなかった22年から続く停滞感を打ち破れていない。この秋はシーズン終了後から、スイング時に左肩が下がる悪癖改善と下半身主導の打法習得に取り組んでいる。
明確になった個々のテーマ
ベテランだけでなく新米の裏方も今秋キャンプを支えている。通算290試合に登板し、23年限りで現役を引退した一岡竜司は、アナリストとして同行。投球の軌道や回転数が計測できる「Rapsodo(ラプソード)」やバットの軌道やスイングスピード、角度などが測れる「ブラストモーション」を用いながら選手の技術向上の手助けをしている。
「この秋は投手みんなただ投げるだけでなく、各自がそれぞれ取り組んでいることをやろうしている姿が見えます。斉藤(優汰)だったら、黒田(博樹球団アドバイザー)さんや永川(勝浩投手コーチ)さんにフォークを教えてもらっている。球種がひとつでも増えれば大きいと思う。大道(温貴)もほぼ真っスラのようなカットボールを覚えてくれて、益田(武尚)も右打者の内角ツーシームをブルペンで積極的に投げている。練習を見ていても、それぞれが自分のやるべきことが分かっているなと感じます」