フィギュアスケート、氷上の華BACK NUMBER
「カミングアウトをして、多くのサポートをもらって…」米国スケーター、アンバー・グレン“GP初優勝”の舞台裏…25歳できめたトリプルアクセル
text by
田村明子Akiko Tamura
photograph byGetty Images
posted2024/11/08 17:01
フランス杯にてGP初優勝を決めたアメリカのアンバー・グレン
「私は長い間、結果を出すことができないスケーターでした。GP大会に出してもらえたら、最下位じゃなくてほっとする、みたいな感じが続いていたんです」
グレンがそう語ったのは、謙遜ばかりではない。動きが大きく華のあるスケーターでありながら、彼女は何年もSPとフリーの2本をクリーンに揃えることに苦戦し、大きな表彰台を逃してきていた。
性的マイノリティであることのカミングアウト
「またカミングアウトもして、自分のメンタルの状態についても、正直に告白していました。すごく多くのサポートをもらって、みんなから応援してもらっているのに、なかなか結果が出せなかったんです」
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グレンは2019年の年末に性的マイノリティであることをSNS上で告白。またADHD(注意欠如・多動症)であることなども公表していた。こうして個人的な悩みなども率直にオープンにしてきた彼女はファンからの好感度が高く、同じような悩みを抱える若いアスリートにとってのロールモデル的存在にもなっていた。
「2020年くらいにスケートをやめることも考えていたのですが、パンデミックで何もできなくなり、どれほどスケートが好きなのか再確認しました。それでオフアイスのトレーニングをしっかり続けて、氷の上に戻った時、トリプルアクセルを跳ぶという目標をたてたんです。最後に自分が新しいジャンプ、3ルッツを降りたのは11歳の時だったので、新しい挑戦が新たなモチベーションになるかと思って」
練習で降りるのに、2か月半かかったという。
「でもそこから、試合で成功させるにはもっと長い時間がかかりました」
「精神的な問題を抱えていても、13歳じゃなくても、新たなチャレンジができるのだということを示したい気持ちもありました」
会場にはいつも2時間前に入り、ウォームアップには人一倍時間をかける。SP後は会見が始まるのを待つ間に、会見室でもローラーで脚を丹念にマッサージしていた。
「25歳は人間としては若いけど、スケーターとしてはもう若くない。些細なことが、不調につながったりするので体のメンテナンスにはとても気を付けています」