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DeNAが勝てば…日本シリーズMVP最有力候補か? 桑原将志31歳、二度のスーパープレーも“当然”と考えるワケ「止めるしかない、それだけです」
text by
鷲田康Yasushi Washida
photograph byHideki Sugiyama
posted2024/11/02 17:08
日本シリーズ第3戦でDeNA桑原将志がみせた果敢なダイブからのスーパーキャッチの決定的瞬間
2勝4敗で敗れた17年のシリーズではいきなり3連敗で崖っぷちに追い込まれたDeNA。このときも今シリーズと同じ1番を任されていた桑原は、3連敗中に13打数無安打、6三振と散々な成績で“戦犯”に挙げられた一人だった。自身にとっても短期決戦で結果を残すことの難しさ、勝つことの困難さを身に染みて感じた戦いだった。
だからこそ今年のシリーズに賭ける思いの強さは人一倍、強い。
あれから7年が経った今年のシリーズも、いきなり連敗スタート。嫌な思いがよぎった横浜スタジアムでの2試合目の試合後のことである。キャンプテンの牧秀悟内野手が音頭をとって、選手だけでミーティングが行われた。その席で2017年を経験した選手たちが、いまチームとして何をすべきなのか、選手個々がどういう心構えを持つべきなのか、それぞれの思いをぶちまけている。
「厳しい言い方かもしれないけど…」
桑原も牧に求められて発言した一人だった。
「厳しい言い方になるかもしれないけど、今のソフトバンクに勝てる感じがしないと伝えました。負けて悔しくないんか、と……」
それは桑原も自分自身に改めて問いかける言葉でもあったはずだ。
ペナントレースで首位巨人に8ゲーム差をつけられた3位に敗れた。そこからクライマックスシリーズ(CS)で阪神を、そしてリーグ覇者の巨人を破って、日本シリーズまで駆け上がってきた。しかしどこかで現実感のないフワフワしたものを選手たちが感じていたのも確かで、周囲もまたそうだった。
日本シリーズの雰囲気はどうですか? シリーズ出場が決まり、初戦を戦い、事あるごとに何度も同じ質問をされた。
「雰囲気の話はこりごりかな」
「僕個人はもっとできると思っている」
選手ミーティングを終えた第2戦後の駐車場。報道陣に囲まれた桑原はこう言って、自分の中にあるもどかしさを語り出した。