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「中谷潤人vs井上尚弥+拓真」“まるでハリウッド映画”なライバル関係が米国でも話題に…日本ボクシング新章突入「だからこそ、圧倒的なKOを」
posted2024/10/13 11:00
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph by
Naoki Fukuda
世界王座防衛戦まで1カ月を切った9月下旬、3階級制覇王者・中谷潤人(M.T)のロサンゼルスでのトレーニングキャンプを訪れても、世界的なブレイク目前のボクサーらしい緊張感は感じられなかった。
中谷本人を含め、ロサンゼルス近郊のジムにいた関係者はすべてリラックスムード。ボクサーたちが、ある見学者が連れてきた飼い犬を撫でながらトレーニングを続ける様子を見れば、緊張感にあふれた日本のジム所属の選手、関係者は度肝を抜かれるのではないか。
「やり易いですね。みんなフレンドリーに接してくれるんで、小さい頃からそうですけど、助かった部分があります。自分には合っているなというのはあります」
14歳の時からアメリカに定期的にわたり、日米を往復しながら腕を磨いてきた中谷はそう語って表情を崩した。取材を受けている最中にも、より若いジムメイト、来訪者たちと気さくに握手を交わしていく。そんな26歳の王者からは、“貫禄”と呼べるようなものはまだ感じられない。そういった環境を“やり易い”というのは、「ベイビーフェイスアサシン」とでも呼びたくなる童顔の中谷らしい。
現地記者たちも注目する“Junto”
もっとも、本人は純朴さを残していても、ボクシングファン、関係者の間での中谷の評価はアメリカでも鰻登りに上がっているとの印象が確実にある。フライ、スーパーフライ、バンタム級の3階級を制し、7月のビンセント・アストロラビオ戦で魅せた秒殺のノックアウト劇は日本以外でも少なからず話題になった。
リングマガジンのパウンド・フォー・パウンド・ランキングでもすでに9位にランクイン。アメリカでは関心が薄い軽量級の王者ではあっても、ボクシング関係者にとって中谷は注目選手であることに疑問の余地はない。
LAダウンタウンのジムで9月24日に行われた公開練習にはスティーブ・キム、マヌーク・アコピャンといった米西海岸のベテランライターたちが取材に訪れていた。現地興行のリングサイドでも、今をときめく井上尚弥に次ぐ話題となる日本人選手を探すとすれば、それは断然、アメリカ人にも発音のし易い“Junto”なのである。