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「中谷潤人vs井上尚弥+拓真」“まるでハリウッド映画”なライバル関係が米国でも話題に…日本ボクシング新章突入「だからこそ、圧倒的なKOを」
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byNaoki Fukuda
posted2024/10/13 11:00
7月のビンセント・アストロラビオ戦では見事なKO勝利を飾った中谷潤人(26歳)
そんな中谷にとって、ペッチ・CPフレッシュマート(タイ)を迎え撃つ10月14日、有明アリーナでの2度目の防衛戦は新たなショウケースというべき舞台なのだろう。
同じくサウスポーのペッチは、30歳にして76勝(53KO)1敗という豊富なキャリアを誇るが、事前の前評判は中谷が圧倒的優位。ただ勝つだけではなく、またも圧倒的なKO劇をみせなければ大きな賞賛は得られまい。
内容ばかりが問われる世界戦は酷だが、それも中谷の評価が高まっている何よりの証拠でもある。今後、1年の間に、その名はさらにビッグになる可能性がある。少し先走った話になるが、中谷は2025年の間に“2人の井上”と戦うことになる可能性がある世界中で唯一のボクサーだろうからだ。
「(井上拓真は)自分自身が成長できる相手」
近年の快進撃で、中谷は1階級上のスーパーバンタム級に君臨する井上尚弥にとって最大級のライバルになり得る素材とみなされるようになった。前戦後、“モンスター”が直々に“まずは拓真を倒してみろ”と、WBA世界バンタム級王座を持つ実弟・井上拓真との統一戦を促した時点で、来年以降にまで繋がるドラマは分かり易いものになった印象がある。日本人が4団体を制した現在のバンタム級でも、自身に続く2番手的な評価を得る井上拓真との激突は中谷も望むところのようだ。
「井上拓真選手を軽視しているとかではなく、リスペクトしているからこそ戦いたい相手と口に出してきました。自分自身が成長できる相手とやりたいですし、それができる王者として(井上拓真の)名前を出しているんです」
2000年代前半、WBO世界ヘビー級王者だった弟ウラジミール・クリチコを破ったコリー・サンダースに兄ビタリ・クリチコが復讐した例があるが、たとえ軽量級であっても、中谷と井上ブラザーズの絡みはクリチコ兄弟以上にドラマチックになる可能性がある。まるでハリウッド映画のように劇的なシナリオの存在はもちろんアメリカにも届いてきている。だからこそ、当面のペッチ戦の注目度も高く、中谷には優れた内容、結果が期待されているのだといえよう。