プロレス写真記者の眼BACK NUMBER
「このベルトを大きくしてほしいんですよ」“IWGP女子王者”岩谷麻優の焦燥…トラウマ克服で7度目防衛も「1年後も2年後も、4年後も変わらないかも」
text by
原悦生Essei Hara
photograph byEssei Hara
posted2024/10/10 17:04
AEWからの刺客トニー・ストームを倒し、7年前の「トラウマ」を払拭したIWGP女子王者の岩谷麻優。10月5日、愛知県体育館
古き良き時代、日本プロレスにやってきた黒いロングタイツのキラー・バディ・オースチンが披露した危険な技でもあり、レトロ感もたっぷりだ。
7年前の「トラウマ」を払拭するために
ドルフィンズアリーナに現れた、黒を基調としたガウン。この日、ストームは黒に白い水玉のワンピース、そこに赤いアクセントが加わったコスチュームでリングに立った。
シングルの通算戦績は4戦して岩谷の0勝3敗1分。圧倒的に分が悪い。
「あの時とは互いに変わっている。あの時のトニーを意識しすぎないようにしないと。以前、スターダムに出ていたころのトニーはストロング・ゼロだけ警戒すればよかったけど、体がでかくなっている。なつかしいなあという感覚がない。まるで別人です。なんか今回、また自分がケガしてベルト移動だったら、なんてつい思ってしまう。トラウマではないけど……いや、これがトラウマなのかな。モヤモヤを晴らさないと。トニーだからケガしちゃった、じゃなくて。ケガはたまたまだったのね、くらいに思わないと」
恐怖を振り払い、覚悟を決めた。
「絶対勝つぞ。今度は勝つぞ。これはチャンスだ！」
岩谷は気持ちを切り替えて7度目の防衛戦に臨んだ。2023年4月にメルセデス・モネから王座を奪ってから約1年半。林下詩美、ステファニー・バッケル、朱里、白川未奈、Sareee、藤本つかさ、そしてトニー・ストーム。海外や他団体にベルト流出の危険性がある試合もしてきた。
意を決して放った低空ドロップキック。岩谷はストームのパイルドライバーを5発も浴びながら、立ち上がった。
「自分を追い込んで、追い込んで、そこからが本領発揮。できない時もありますけど。そんな試合が好きなんですね」
岩谷はニコッと微笑んだ。
