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ドラフト1位・前田悠伍“ショックのプロ初登板”直後「ソフトバンク広報に連れられて…」記者が見た“異例の対応”ウラ側…野村克也の言葉を思い出す

posted2024/10/03 06:01

 
ドラフト1位・前田悠伍“ショックのプロ初登板”直後「ソフトバンク広報に連れられて…」記者が見た“異例の対応”ウラ側…野村克也の言葉を思い出す<Number Web> photograph by KYODO

大阪桐蔭出身のドラフト1位・前田悠伍がプロ初登板を果たした

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田尻耕太郎

田尻耕太郎Kotaro Tajiri

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KYODO

 19歳の初舞台は、メッタ打ちを食らう散々な結果だった。

 ソフトバンク・ドラフト1位新人左腕の前田悠伍(大阪桐蔭高校出身)が10月1日、本拠地みずほPayPayドームでのオリックス戦に先発して一軍デビューを果たすも、3回8安打0三振6失点でKOされた。

初回は完璧も…前田悠伍の異変

「緊張はしませんでした」

 降板後、コメントを求めた球団広報には開口一番そう振り返った。強がりではなかったと思う。初登板という一生に一度の晴れ舞台でも、前田悠は試合前も試合中も普段と変わらぬ表情、しぐさ、雰囲気を見せていた。マウンドに向かう際、ファウルラインは必ず左足で跨ぐ。この日もそのルーティンを冷静に守っていた。

 立ち上がりは打者3人をわずか6球で片づけた。しかし、2回に5本の長短打を許して一挙4点を失うと、続く3回にはセデーニョに左翼席へ運ばれる2ランを浴びた。マウンドではアウトを取っても、逆に痛打されても表情を変えることはなかったが、被弾の後は珍しくコントロールを乱して、ストレートがすっぽ抜けて左打者の渡部遼人に死球を与える場面もあった。

 小久保裕紀監督は「内容というか、もう通用してないですよね、正直ね」と敢えてバッサリと辛口評価を下した。だが、そこに怒気はない。「ここから這い上がるしかないと思う、という声はかけました。『今日の日を一生忘れることなく』という話はしました」と付け加えた。それでも端的に言えば、実力不足という4文字で片づけられてしまう評価だった。

大阪桐蔭時代もない「3回6失点」の屈辱

 決して何の期待もなく送り出された一軍マウンドというわけではない。「世代ナンバーワン左腕」の呼び声でプロ入りした前田悠に向けて、球団は「特別育成プログラム」を組み金の卵をじっくりと育ててきた。二軍のウエスタン・リーグでは12試合に登板してきたが、先発ローテに定着させたのは8月以降だった。二軍成績は4勝1敗、防御率1.94。昇格に値する堂々たる成績を残し、投手陣を束ねる倉野信次一軍投手コーチ(チーフ)兼ヘッドコーディネーター(投手)も「(一軍は)二軍で成績を出していない人を試す場ではない。順位(優勝)が決まったとはいえ、CSも控えている中で投げさせたい投手は沢山います。それでも彼が自分で勝ちとった登板」と話していた。

【次ページ】 広報に連れられて…試合後の光景

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