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「先に言っときますよ」朝倉海の予言…秋元強真のRIZINデビュー戦“1ラウンドKO”はなぜ生まれた? 朝倉兄弟から受け継いだ「ドラマ性」
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph byRIZIN FF Susumu Nagao
posted2024/10/02 18:12
RIZINデビュー戦でKO勝利を収めた秋元強真(18歳)
序盤から“攻めっぱなし”の圧勝であれば、たまたまということもある。勢いで押し切るような勝利も格闘技にはある。ただ、この試合はそうではなかった。
秋元は開始直後、スタンドで圧力をかけたところでカウンターのタックルを決められてしまう。グラウンドで下になり、バックを取られかけるピンチ。そこで落ち着いて切り返し、立ち上がって攻撃につなげた場面が勝負の“キモ”ではなかったか。
朝倉兄弟不在のRIZINでデビューした“ドラマ性”
連勝で大勝負を迎えた若者が、これまで経験してこなかったピンチに冷静さを失い、イニシアチブを掴みきれないまま試合を終える。そんな姿は決して珍しいものではない。秋元はそうなってもおかしくない場面を迎え、それをクリアした上でKOしたのだ。反省点があったからこそ、それを克服する強さも見えた。
「バックからの逃げは本当に自信があるので。あそこで無理に立ち上がろうとしたらラッシュをかけられてたと思います。だからあえてハーフバックの体勢にもっていって、安全に向き直ろうと」
展開を振り返る言葉も、あくまで冷静だった。感じ入るのはその強さだけではなかった。RIZINという舞台で強さを発揮する、そのタイミングが絶妙だった。
朝倉海は現在、世界最高峰の舞台であるUFCと契約。RIZINのベルトは返上している。未来は7月28日の平本蓮戦に敗れ「いったん」という留保つきながら引退を表明。RIZINは今、大会を牽引してきた2大スターを欠いた状態にある。榊原は、今大会を「新たなチャプター」と位置付けた。
そういうシチュエーションで、秋元はRIZINデビューを果たしたのだ。RIZINファンが“朝倉兄弟の後継者”を求める中で、朝倉兄弟と同じジムから、その有力候補が現れた。実力だけではないドラマ性を、秋元強真という選手は持っている。
本人も“後継者”たる自分に意識的だ。試合ではいたトランクスは金と銀のツートンカラー。
「金は海さんの大晦日(のコスチューム)で、銀は未来さんがいつも使ってる色です。……バレないと思ってたんですけど、すぐバレちゃいましたね(笑)」