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「サプライズとかあるとすれば…」引退発表したヤクルト青木宣親(42歳)が語っていた“引退試合のこと”「想像するだけで泣きそうです」
posted2024/10/01 11:14
text by
青木宣親×尾崎世界観Norichika Aaoki & Sekaikan Ozaki
photograph by
JIJI PRESS
9月13日に今季限りでの現役引退を発表した青木だが、じつは本書の中で“来たるべき引退”について、自らの考えを明かしていた。9つのテーマの中から「引退」について語った第9章を抜粋して紹介します。《全2回の後編/前編から続く》
引退試合の記憶
最初に出場した引退試合は、プロ2年目だった2005年、佐藤真一さんの引退セレモニーがあった横浜戦でした。まさにその試合の第1打席でシーズン200安打に到達したんです。さらにもう一本ヒットを打って201安打。自分自身としては打ちたくて打ちたくて必死だったのですが、それが先輩の引退の日というのは凄く印象深いです。佐藤さんは8回に代打で出てきて、もう少しでホームランというライトフェンス直撃のツーベース。試合後はみんなで胴上げして、スピーチを聞いて、忘れられない試合になりました。
07年は古田さんの引退試合がありました。僕はその試合で4番に座ったんですよ。「お前が4番やれ」って。これからのチームを引っ張るんだぞ、というメッセージだと言ってくれました。プレイングマネージャーですからね。自分の引退試合で自分でオーダーを決めて指揮するわけですから、考えてみれば凄いことでしたね。
僕が4番で5番は古田さん。前を打つとなると、必然的に僕が打たないと古田さんまで打席が回らない、という場面になります。6回裏は2アウトから(アーロン・)ガイエルがランニングホームランで3点差。(アレックス・)ラミレスがヒットを打って2アウト一塁となり、これは絶対に繋がないといけない、と。とてもプレッシャーがかかりました。ファンの方は古田さんの打席を見たいわけだから、その思いがビシビシ伝わってきました。
ここは意地でも打たないと。そんな思いで打席に立ちました。結果はショートの後ろあたりに弾むレフト前ヒットで、もう必死の一打でした。さらにもう1打席、8回にも2アウト、ランナーなしで回ってきました。ここはフォアボールを選んで2アウト一塁。そこで広島のピッチャーがこの年に引退する佐々岡(真司)さんに交代して、古田さんとの最後の勝負が実現したんです。
古田さんの最終打席はショートゴロ。塁上から見ていましたが、もの凄い大拍手が降り注いで、あれは感動的な光景でした。今になって思うと、プレイングマネージャーは本当に大変だったと思う。チームを指揮しながらも、自分も試合に出場する なんて......。セレモニーでは、「また会いましょう」って明るく締めくくって、見送る選手たちも湿っぽい雰囲気にはならなかった。凄く古田さんらしい引退試合でした。
ジーターの引退試合にあのジョーダンが
引退試合って、日本ならではの文化ですよね。アメリカでは引退試合ってないんです。スタープレーヤーの場合は今シーズン限りで辞めます、というような宣言をして、1年間回っていく中で相手チームから記念品をプレゼントされるようなセレモニー的なものはありましたけどね。あとは、引退した翌年のシーズン中のホームゲームで「1日契約」の形をとって引退セレモニーをする。松井さんはその形でニューヨー ク・ヤンキースから送り出されましたね。