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大谷翔平「50-50達成」の原点…プロ初本塁打を“打たれた”男の告白 引退後に変わった“第1号”への想い「打たれた当時は悔しかったですけど…」
text by
田口元義Genki Taguchi
photograph byJIJI PRESS
posted2024/09/21 06:02
2013年、プロ1年目だった大谷翔平に「初本塁打を打たれた」楽天の永井怜。当時は悔しさもあったが、いまとなっては「誇らしさもある」という
「『弱いところを突いていこう』って話のなかで、『インサイドを多めに』と指示は出ていたので。一発がある選手だったけど、その時はまだホームランが出ていなかったし、『長打だけは防いでいこう』と」
初対戦で感じた「大谷の凄味」とは?
初球。真ん中からインコースに曲がるスライダーに大谷のバットが反応する。ショートゴロに打ち取ったものの、この時の永井は自らのチェックリストに新たな大谷の凄味を追加したのだという。
それは、スイングスピードの速さだ。
「打席での反応を見てその印象があったんですね。なので、『甘いところに投げたら打たれるから注意しよう』とは意識していました」
永井の述懐のように、警戒はしていたのだ。それを凌駕する対応をまざまざと見せつけられたのが、4回の2度目の対戦である。
1-1から1点を勝ち越され、なおも1アウト三塁のピンチで大谷を打席に迎えた。
初球はインローへのカーブで様子を見て1ボール。そして、2球目の大谷のひざ元を厳しく突くストレートは、永井も手応えを抱くほどの1球だったのだという。
このボールが「よすぎた」ことが、結果的に裏目に出てしまったのである。
2ボールからの3球目。ストライクゾーンいっぱいのインコースへ投じる。ボールの軌道は悪くはない。だが、永井は心の中で叫んでいた。
甘い!
大谷が懐に左ひじを潜らせるようにバットを押し込み、下半身をくるりと回転させる。ボールを捉えられ、放たれた打球は弾丸ライナーでライトスタンドに突き刺さった。
大谷にとってプロ92打席目でようやく飛び出したホームランは、実質的に永井がノックアウトされる一発となってしまった。