長与　松永ファミリーが、弱体化してたんだと思う。かつてはワンマンで、強かったんだもん。選手にひとことたりとも言わせないぐらいの強さを持ってたのに、何かが起こって、それが何かはわからないけど、そのころはもう自分が全女にいなかったから、はっきりしたことは言えないけど、弱くなってた気がする。だってさ、絶対に、絶対に土下座する人たちじゃないもん。したらダメだもん、って思ってた。もう圧倒的に強いって思ってたから、ほんとにすべてが信じられなかった。どこまでが出来レース？　それともリアル？　ずっとモヤモヤっていう、そんな感じ。

「いつかあの世へ逝ったら、聞いてみたいよ…」

――積年の疑問があるので、この際だからぶつけますね。千種さんは“女版・松永高司”になりたかったですか？

長与　ごめん。あのね、うち、全女イズムないんだ。選手が次々と離脱していって（97年）、大変な借金を背負って回んなくなって、それでも全女を守ろうぜって最後まで残った人たちには全女イズムがあると思う。でも、うちはそれじゃない。似たような経験はしてるよ、若いときに。でも、ほんとの全女イズムじゃないし、真のモンスターでもない。何に対しても絶対にひれ伏さない松永兄弟は、いとも簡単に自分たちの選手で賭け事をしちゃう。これこそモンスターだし、お金の使い方もどんぶり勘定。じゃあ、情けがないのかといえば、すっげぇあるし。

――明日の食事代をくれるし。

長与　そう、そう（笑）。私に全女イズムっていうのは、ないんだよ。ただ、あんな人たちと出会えたことは財産だよね。言いたいよ。「2度とあなたたちのような人とめぐり合うことはないでしょう」って。

――国松さんが横浜アリーナで千種さんに言ったことと同じ。

長与　ほんとだね（苦笑）。自分のなかで、あの人たちは最強だと思ってるよ。「道がなけりゃ、俺らが簡単に作ってやるから」っていう人たちだから。戦国武将みたいな人たちだよね。そのなかで、自分を格好よく言わせていただければ、前田慶次（破天荒な逸話で知られる傾奇者）みたいな役だったのかもしれない。言うことを聞きそうで聞かない、うつけ者なのか、豪傑なのか。いつかあの世へ逝ったら、聞いてみたいよ。「何をしてほしかったの？　何をするべきだったの？」って。

――Netflixシリーズ「極悪女王」が世界配信されているこのタイミングで、1つの謎が解けました。真の最強モンスターは、松永4兄弟だったんですね。

長与　だから、そのモンスターの下で生まれ育った自分たちもモンスターになるわけだ。《インタビュー第1回、第2回も公開中です》