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「さすが三球王!」三笘薫を絶賛も…0−7にガク然の中国「南野拓実弾でファン途中帰宅」「選手は記者に激怒」“テレビに映らない”W杯予選ウラ側
text by
茂野聡士Satoshi Shigeno
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/09/07 11:03
中国で「三球王」の異名を取る三笘薫。彼ら日本代表相手に惨敗を喫した中国だが……埼スタでの様子はどうだった?
実際に試合が始まると、中国側から歓声が沸いたのは、日本のビルドアップがズレて中国ボールのスローイン、そして日本の攻撃に対してボールを高く蹴り上げてクリアをした時くらいだった。
中国が90分で放ったシュートは1本だけ、それも枠外。ビルドアップと技術差で日本にゲーム支配を許し、球際でも“フェア”とは言えるのだが、かつてACLなどで物議を醸したような激しさは皆無。スタッツ、内容ともに特筆すべきことがなければ、敵地に駆けつけたファンも盛り上がりようがない。
後半途中、連続失点→諦めモードで次々と帰宅
中国ファンの“諦念”を感じたのは、後半途中辺りからだった。
「あれ、ゾロゾロと出口に向かってる」
遠藤航と三笘薫のゴールによって日本2点リードで折り返した試合は、後半に入ってより一層ワンサイドゲームの様相を呈した。そして後半7分と13分、南野拓実が立て続けにゴールを奪った付近と記憶する。テレビ中継や配信では映っていなかったようだが……あれだけ赤く包まれていた中国応援団の一帯が、青い席で目立ち始めた。
〈こりゃ勝てる見込みがない〉
そんな心の声が聞こえそうなほど、肩を落として帰途につくファンが目立った。一緒に見ていた取材者は、ふとこんな風に漏らしていた。
「プレミアリーグで、こういう場面たまに見ますね」
残留争いを強いられる中小クラブは、マンチェスター・シティなどのメガクラブ相手に大量失点を喫することが往々にしてある。逆転の見込みがないスコアになると、スタンドは気づけばガランとしている。そんな光景を、日本代表の公式戦で見るとは……。
試合はその後も伊東純也の復帰ゴールとアシスト、久保建英の豪快なダメ押し弾もあって7−0でタイムアップ。ただ、スタジアムに残った中国サポーターは最後まで声を振り絞り、惨敗を喫したイレブンに対してブーイングではなく拍手で迎えた。
中国はアジア2次予選もギリギリでの通過だった。日本との差を客観的に認知しているからこその振る舞いだったのかもしれない。
指揮官が日本を絶賛、選手は記者に激怒
試合終了から20数分後。中国代表ブランコ・イバンコビッチ監督の会見は中国語、英語の通訳がいた上で日本語でも対応していた。カメラではなくスマートフォンで動画撮影する中国メディアも多い中で、厳しい質問が飛んだ。
〈(日本戦に向けて)守備の強化をしきりと強調されていましたが、結果を見る限り自ずとそこがうまく機能しなかったと思います。どういったことを学びましたか〉
〈この前の試合が韓国戦で0-1で負け、今日は0-7という結果に終わりましたが、これほどの点差がつくことは監督は予想されていたんでしょうか〉
イバンコビッチ監督が身を乗り出して答えたのは、2つ目の質問だった。