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ドヘニーは本当に“井上尚弥の挑戦者”にふさわしかったのか?「10年前に大舞台を迎えていたら…」英国人記者が37歳のベテランに賛辞を送る理由 

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杉浦大介

杉浦大介Daisuke Sugiura

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photograph byHiroaki Yamaguchi

posted2024/09/05 17:07

ドヘニーは本当に“井上尚弥の挑戦者”にふさわしかったのか?「10年前に大舞台を迎えていたら…」英国人記者が37歳のベテランに賛辞を送る理由<Number Web> photograph by Hiroaki Yamaguchi

王者・井上尚弥に挑み、キャリア初のKO負けを喫したTJ・ドヘニー

 惜しむらくはドヘニーがすでに37歳だったこと。人間は40歳に近づけば近づくほど、身体が痛む可能性は増していきます。彼が27歳で大舞台を迎えていたら、少し違う姿も見せられていたでしょう。あのようなケガによって、不本意な形で戦いを終えることもなかったのかもしれません。

 特にドヘニーはプロボクサーとしてもすでに10年以上にわたって戦い続け、多くのトレーニングキャンプを経験して身体に負荷をかけてきました。そんな時期に、両拳に爆発的な破壊力を秘めた最大の難敵と対戦することになったのです。だとすれば、徐々に井上にペースを奪われ、試合続行が不可能なほどに身体を痛めてしまったのは仕方なかったのでしょう。

「期待以上の成果を出した選手」

 今後、ドヘニーが戦い続けたとして、アフマダリエフ、ネリといったこの階級のトップ選手たちと対戦してもいい試合をする可能性があるとは思います。もともとこれまで多くの番狂わせを可能にし、這い上がってきた選手ですから。

 ただ、大方の予想通り、井上との対戦は荷が重かったということ。そしてあのようなケガを負ってのTKO負けを見ると、やはり今後を懸念したくなります。ビッグファイトの前には8〜10週間に及ぶしっかりとしたトレーニングキャンプを積んだはずで、その上であんな故障をしてしまうなら、それはグローブを壁に吊るす時期が来たという兆候なのかもしれません。

 ドヘニーは一般的に「Over-achiever(期待以上の成果を出した選手)」として認識されています。どの国でも、誰とでも戦い続け、再度の世界挑戦まで辿り着いたのは立派だったと思います。これから先にどうなろうと、そのキャリアを私はリスペクトし続けるでしょう。

前編からつづく)

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「イノウエの頭にはネリ戦のダウンが…」井上尚弥の“奇妙なKO未遂”を英国人記者はどう見た?「ドヘニー陣営はパニックを起こしていた」

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