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ボクシングPRESSBACK NUMBER
ドヘニーは本当に“井上尚弥の挑戦者”にふさわしかったのか?「10年前に大舞台を迎えていたら…」英国人記者が37歳のベテランに賛辞を送る理由
text by
杉浦大介Daisuke Sugiura
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2024/09/05 17:07
王者・井上尚弥に挑み、キャリア初のKO負けを喫したTJ・ドヘニー
試合前、私は長きにわたって真摯に戦い続けたドヘニーのような選手が今回の機会に恵まれたことを喜んでいました。大変なナイスガイであり、世界中のどこででも戦ってきたアンバサダーのようなボクサー。2023年に日本で複数の番狂わせを起こし、世界挑戦の機会を勝ち取ったことも好感が持てました。
井上はスーパーバンタム級に上げて以降、王者だったスティーブン・フルトン、マーロン・タパレス、階級でも最高級に危険な選手だったルイス・ネリに勝ち、対戦相手の選択肢はすでに限られていました。まだサム・グッドマン、ムロジョン・アフマダリエフという指名挑戦者たちが残っていますが、ここでリングマガジンの階級ランキングで7位にランクされたドヘニーが挑戦者に選ばれたことに不満はありません。そして実際に、ドヘニーはリング上で自身の勇敢さを十分に示したと思っています。
「11キロ増」は耐久力に役立った
ドヘニーが計量から試合までの間に11キロも体重を増やしたことが取り沙汰されましたが、その点が第7ラウンドの故障につながったのかどうかはわかりません。ここで私見を言うなら、体重増加は耐久力という面で役立ったと思います。
スーパーフライ級やバンタム級での井上は相手をバタバタと倒しまくっていましたが、スーパーバンタム級ではやはりそうはいきません。強烈なボディブローを何発も決めていましたが、ドヘニーに致命的なダメージを与えることはありませんでした。サイズで上回った挑戦者は一定の成功を収めたと見て良かったと思います。
ただ……それでも最終的には井上がTKO勝ちを収めました。これはもう実力の違いとしか言いようがない。井上と陣営は相手が大きく体重を増やしてくることを事前に察知し、それに対応するようなファイトプランを考えていたはずです。また、あれほど大柄なドヘニーのパンチを浴びても効果は感じられず、“モンスター”はこの階級での打たれ強さを証明したとも言えます。
結局のところ、実力上位のボクサーが順当に勝ち残ったのです。