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フェルスタッペンも頭を抱えるレッドブルの凋落…その一因となった離脱者続出のチーム内権力闘争の真相とは
posted2024/08/30 11:02
text by
尾張正博Masahiro Owari
photograph by
Getty Images
チャンピオンがうなだれた。サマーブレイク明け初戦となったオランダGPで、マックス・フェルスタッペン(レッドブル)は2位にはなったものの、ランキング2位のランド・ノリス(マクラーレン)に22秒もの大差をつけられて完敗した。レース後に上位3人のドライバーによって開かれる記者会見場にやって来ると、会見が始まるまでの間、珍しく頭を抱えてうつむいていた。
フェルスタッペンが落胆するのも無理はない。フェルスタッペンが最後に勝利したのは、6月のスペインGP。その後、オランダGPまでの5戦で表彰台の頂点に立っていない。フェルスタッペンが初めてタイトルを手にした2021年以降、これほど長く優勝から遠ざかっているシーズンはない。
ドライバーズ選手権で依然としてトップに立っているフェルスタッペンだが、オランダGPの結果は中盤戦以降、レッドブルが最速でないことを実感させるのに十分な内容だった。頭を抱えていたのは、このままでは今シーズンのチャンピオンシップも危ういと感じていたからに違いない。
開幕2連勝を飾ったレッドブルが序盤戦でリードを広げていったとき、フェルスタッペンとレッドブルの4連覇は確実かと思われた。ところがその後、ライバルたちがレッドブルとの差を縮め、ここ数戦はレッドブルを上回るパフォーマンスを披露している。
マシンだけではない失速の理由
なぜ、レッドブルはシーズン半ばに失速してしまったのか?
直接的な原因は、新パーツを投入するアップデートが効果を発揮しないという技術的な問題が発生してしまったこと。オランダGPではいくつかのパーツを開幕戦で使用したものに戻して戦っていたと言われている。開幕戦以降、着実にマシンを進化させてきたマクラーレンに逆転されるのは当然の結果と言える。
ただし、レッドブル失速には技術面以外の原因があり、それが事態を複雑にしている。チーム内に存在する権力闘争だ。これは2022年の秋に、レッドブル創設者のディートリッヒ・マテシッツが亡くなってから表面化した。
マテシッツ亡き後、レッドブルのF1プログラムは新任のオリバー・ミンツラフによってコントロールされることになった。そのミンツラフに対抗するため、チーム代表のクリスチャン・ホーナーはレッドブルの筆頭株主であるチャルーム・ユーウィッタヤーを後ろ盾にして、チームとエンジン部門の「レッドブル・パワートレインズ」の実権を掌握。そしてマテシッツ時代に二人三脚でチームを統率してきた、モータースポーツ・コンサルタントのヘルムート・マルコを追放しようと企てた。