濃度・オブ・ザ・リングBACK NUMBER
「これからの私は“狂乱の貴婦人”」フェリス卒のお嬢様レスラーが師匠と大ゲンカ…桜井麻衣が“最後のジュリア戦”で見つけた個性
posted2024/08/31 11:05
text by
橋本宗洋Norihiro Hashimoto
photograph by
Essei Hara
女子プロレスラーの桜井麻衣は“貴婦人キャラ”でファンの認知度を高めたが、本人は「キャラではないので」と言う。リングに上がるうちに、自分が「貴婦人であることに気づいた」のだ。
もともとは芸能界にいた。チャンスを求めてアクトレスガールズでプロレスを始め、より本格的に取り組みたいとスターダムへ。ユニットDonna del Mondo(DDM)に加入するとリーダーのジュリアに厳しく鍛え上げられた。
「こんなに何もできないのかと驚きましたよ」
当時のことを、ジュリアはそう振り返っている。少しずつ実力をつけると、当時スターダムのエグゼクティブ・プロデューサーだったロッシー小川は彼女に“リングの貴婦人”というキャッチフレーズをつけた。そこで桜井は気づいた。「そうだ、私は貴婦人だったんだ」
「勝ちましたわ!」人気を呼んだ“貴婦人マイク”
対戦相手を踏みつけて「この庶民が!」と罵倒し、試合に勝てば「勝ちましたわ!」とアピール。大会後のディナーの予定を観客に伝えると「あなたたち庶民は立ち食いそばでも食べて帰りなさい」。
この“貴婦人マイク”がウケた。実際に富士そばでオリジナルメニュー発売、イベント開催にまで至るのだからプロレス人生は面白いものだ。スターダムでしっかり自分のポジションを確立した“貴婦人”だったが、そこで満足したくなかったという。
勝っても負けてもマイクを握れば拍手と笑いが起きる。だが本当はもっと上に行きたかったし、実力を認められたかった。だから、3月いっぱいでのスターダム退団を決意した。現在は5月に旗揚げした新団体・マリーゴールドの所属だ。
「同じところにいては成長できないと思ったんです。どうしても自分に甘えてしまう。環境を変えることで自分も変わろうって。マリーゴールドは新しい団体なので、先々どうなるか分からない。もしかしたら収入や生活水準が下がるかもしれない。そのリスクがある中で“そうはならないぞ”と頑張るのも必要なことだと思いました」