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「15勝して30本打ったらMVPクラスですよ」大谷翔平がエンゼルス時代に語っていたMVPのイメージ「不可能なことに挑戦している気持ちはないですね」
text by
石田雄太Yuta Ishida
photograph byNanae Suzuki
posted2024/09/05 17:00
メジャー初のMVPを獲得したエンズルス時代、2021年の大谷翔平。シーズン前にMVPのイメージを明かしていた
「日本の4年目は徐々に慣れていって、自分がうまくなった分、結果が残ったという感じでした。でもメジャーは毎年、相手が変化していく難しさがあるんです」
ーー変化、というのは?
「日本ではまず自分が一番下にいて、先輩の顔ぶれがほぼ変わらない中、自分がよくなっていく感覚でした。でもメジャーでは、急激に良くなったという選手が次から次へと出てくるじゃないですか。そういう若いプロスペクトにつられてスター選手もどんどん凄くなる。トップレベルの顔ぶれがあっという間に入れ替わるので、自分さえうまくなれば、という世界じゃないんです」
ーー自分と同じか、もっと早いスピードで周りも進化しているイメージなのかな。
「だからついてくる結果が想像しにくいところはあります。それでもピッチングもバッティングも、自分の力を出し切れたときには数字も残ると1年目に思いました。出し切ったときにできるし、自分の力を出せなかったときには絶対にごまかせない。結果を出すための第一歩は1年間、健康で、しっかりと自分の力を出し切るところなんだろうなと思っています」
ーー二刀流をメジャーでやっていけるという手応えについてはいかがですか。
「スケジュールを理解して、慣れて、その中でうまく回せるサイクルを作れるかどうかによると思います。投げる前日は気持ちを作らないといけないので休養は必要かなと思いますが、いったん(二刀流の)サイクルの中に入ってしまえば、同じ流れで1週間、それをそのまま1年間、継続するだけの話ですからね。まずはそのサイクルに入っていけるだけの実力を見せていくことが一番かなと思います。選手としては『全試合出てくれ』と言われたいですし、ただ登板前日だけは気持ちを作るために休んで、1年間ローテーションを守って、バッターとしては残りの試合に全部出られれば、それが理想です」
15勝して30本打ったらMVPクラス
ーー高校時代から『先入観は可能を不可能にする』という言葉を大事にしてきた大谷さんですが、今も二刀流に対する先入観と戦っている感覚はあるんでしょうか。
「どうでしょう......ナメてんな、というシチュエーションは最初の頃よりは少なくなっているかな(笑)。過去の(二刀流の)データがないので難しいところはありますが、だからやりがいがあるということでもありますし、今は不可能なことに挑戦しているという気持ちはあんまりないですね」
ーー二刀流としては、現実にどんな数字をイメージしていますか。
「数字を残すためにもちろん技術は必要ですけど、それ以上に絶対量が必要じゃないですか。 試合数を増やせれば、数字的な伸びも高くなると思っています。バッターとしては相手が左ピ ッチャーでも出られれば30本のホームランはいけると思いますし、ピッチャーとして25試合に先発できれば15勝もいけるんじゃないかなと思います。15勝して30本打ったら、ほとんどMVPクラスの数字ですけどね(笑)」
<続く>