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「15勝して30本打ったらMVPクラスですよ」大谷翔平がエンゼルス時代に語っていたMVPのイメージ「不可能なことに挑戦している気持ちはないですね」 

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石田雄太

石田雄太Yuta Ishida

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photograph byNanae Suzuki

posted2024/09/05 17:00

「15勝して30本打ったらMVPクラスですよ」大谷翔平がエンゼルス時代に語っていたMVPのイメージ「不可能なことに挑戦している気持ちはないですね」<Number Web> photograph by Nanae Suzuki

メジャー初のMVPを獲得したエンズルス時代、2021年の大谷翔平。シーズン前にMVPのイメージを明かしていた

「一番に意識したのは左の軸足の加重です。一昨年、左ヒザの手術をしたおかげで痛みはほとんどなくなったんですけど、まだ乗せづらさがあったのかもしれません。結果、ヒザに加重させられない分、代償動作として左の股関節をより深く捻っていたんです。そうすると右肩が入ってしまうので、ボールが見えづらくなる。ボールが見えづらくなれば、それだけボールを中(身体の近く)へ入れてしまって打ち方が窮屈になります。だから右ヒジが上がる悪循環が生じていたので、構えから体重移動にかけての軸足の使い方、つまり加重の仕方が甘かったところを修正しなくちゃいけないと思って、ずっと練習しています」

ーーヒザに体重が乗っていないと気づいたのは何かきっかけがあったんでしょうか。

「そこはビデオを見て一発で気づくようなところではないんですけど、何となくバットを加速させづらそうなスイングをしているなということは感じていました。その原因が何なのかといろいろ試してみたら、無理矢理にでも軸足に体重を乗せたときのほうがスイングしやすいなと感じたんです。同時に、そうしようとすると手術明けのイヤな感じがまだあるなというのが10月、昨シーズンが終わったときの感覚でした。だからオフは元通りにしようと、極端なことをしてきました。何も考えずに振ると身体が楽をしたがって右足に体重をかけようとしたり、身体を前に流してスイングしようとしちゃうので、オフは窮屈なくらいに意識して、左へ加重しながら打っています」

ムダな練習だとわかったことがプラス?

ーー軸足に体重を乗せられなかったのは、今思えばヒザに痛みが残っていたからなのか、痛かったときに庇っていたクセが残っていたからなのか、そこはどうでしょう。

「クセが残っていたというのはあったかもしれません。痛くはないけど庇いたくなるのは手術明けの難しさかなと思います。手術明けって楽なほうへ流されてしまうせいか、いくら練習してもうまくならなかったし、状態も上がってこなかった。それをムダな練習だとは言いませんけど......いや、それがムダな練習だったとわかったことがむしろプラスだったのかもしれません」

ーーえっ、ムダな練習だった?

「そうですね......庇うクセが残ったままの練習ではいくらやっても効果が上がらないし、試合で結果が出ないことに向き合わなければそこに気づけなかったと思います」

ーーこのオフには、ドライブライン(シアトル郊外のトレーニング施設)へも足を運んだんですよね。

「スイングの測定をしてもらったんですけど、そこで出た数値を見て言われたのが『腕の力で振っている』ということでした。左足で蹴れていない分、体幹を使い切れていなかったんでしょうね。それでもスイングスピードが落ちないのは手の力が強いからで、そこが僕のいいところでもあり、悪いところでもある。最初、その数値を見たときには、単純に自分の特徴として腕が強い、だから腕が早く出ちゃうと思ったんですけど、それまでに自分で感じていたことも考え合わせると、軸足に乗せ切れていなかったから腕に頼っていたのかな」

「自分さえうまくなれば、という世界じゃない」

ーーファイターズ時代は、4年目に二刀流として結果を残しました。今年、メジャー4年目を迎えてみて、フルシーズンを万全な状態で過ごせれば投打ともに数字が残るという手応えはお持ちですか。

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