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「“あんな出来事”があったのに…なぜ勝てた?」松山英樹がアメリカ人記者の質問に“ステキな返答”…急造キャディと掴んだ米10勝目&賞金5億円
text by
舩越園子Sonoko Funakoshi
photograph byGetty Images
posted2024/08/20 06:00
銅メダルを獲得したパリ五輪後、まさかのトラブルに見舞われた松山英樹(32歳)。仲間に捧げる勝利でもあった
思えば、松山はいつだって失敗や敗北で噛み締めた悔しさを、自身の原動力にして這い上がってきた。
大学生のアマチュアとして2度目に出場した2012年マスターズでは、最終日に崩れ、ホールアウト後に号泣した。あの悔しさがあったからこそ、2021年のマスターズ制覇を成し遂げることができた。
まだメジャー未勝利だった2017年の夏、全米プロ最終日を単独首位で折り返したものの、後半に崩れ、目前だったメジャー・タイトルを自ら手放す結果になったときも、松山は大勢の日本メディアの前で号泣し、「自分が不甲斐ない」と唇を噛み締めた。
その悔しさがあったからこそ、それから4年後、彼はメジャー初優勝を挙げることができたのだと私は思う。
「文句は一切言わず、自分で最善を尽くす」
そして今年。フェデックス・セントジュード選手権にやってきた松山は、ツアー選手権進出を初めて逃した昨年の悔しさに加え、ロンドンで味わった窃盗被害による後味の悪さを抱えていた。
ディナーを食べていた際、最初に「僕のバッグはどこだ?」と声を上げたのは早藤キャディだったという。松山自身のパスポートが無事だったことは不幸中の幸いだったが、早藤キャディと黒宮コーチはビザ付きのパスポートを盗まれ、日本への緊急帰国を余儀なくされてしまった。被害の詳細を米メディアに説明した松山は、すべての責任は自分にあると語ったそうだ。
臨時でバッグを担いだ田淵キャディとは「これまでは、ほぼしゃべったこと無かったけど、PGAツアーのことは多少わかると思っていた。心配はしていなかった。今までとは違ったルーティーンになったけど、それは仕方ない。彼は彼で一生懸命やってくれた。ライン読みは助かりました」と謙虚に感謝していた。
その一方で、ラウンド中は、自分自身でヤーデージブックに目をやり、その場で距離を計算して数字を見出し、自分でクラブを選ぶ松山の必死の戦いぶりからは、「文句は一切言わず、自分で最善を尽くす」という姿勢がはっきりと見て取れ、試合を戦う際の彼のメンタル面の大いなる成長が伝わってきた。