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メダルまで0.12秒…“世界から最も遠い”110mハードルで村竹ラシッドがパリ五輪決勝ゴール後に明かした思い「喜んでいいのか分かんないっすね」
posted2024/08/14 06:00
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph by
Ryosuke Menju/JMPA
夢の舞台はあっという間に終わってしまった。
まるで幻のように。
13秒21の5着。
メダルまで0秒12差は距離にすると1メートルくらいなのに、届きそうで届かなかった。
「喜んでいいのか分かんないっすね。なんかちょっと中途半端な順位なんで。メダル争いに加われてたかもしれないって思うとかなり悔しさが大きく残りましたね」
22歳の村竹ラシッドは若者らしく、素直な気持ちを教えてくれた。
3年前、五輪の出場権がかかった日本選手権の決勝でフライングし、失格になった。
切符を掴みたいという強い思いが空回りし、手からこぼれ落ちていった。落ち込み、陸上をやめることも考えたという。
「長かったですね。もうずっと待ち望んでいた舞台だったので。この舞台を目標に3年間、ずっとずっとトレーニングしてきたので」
五輪の舞台でファイナリストになるという目標を叶えたうれしさ、でもファイナリストになったことで芽生えた勝利への欲望を熱くそして冷静に受け止めていた。
五輪の陸上短距離で5位という順位は、1932年のロス五輪の100mで6位に入った吉岡隆徳を上回り、五輪での日本男子短距離の最高順位となる快挙だが、「それは知らなかったです。決勝に進めたということは本当に大きな成果ですし、うれしくは思うんですけども。楽しかったという思いとメダルを取れなかったっていう悔しさがあります」と複雑な胸中を口にした。
全身全霊で臨んだ日本人初のファイナル
ファイナリストになった自信だろうか。村竹の表情は予選、準決勝からぐっと大人びたように見える。
超満員のスタジアムで独特の雰囲気の中、緊張感のあるレースの経験が村竹を成長させたのだろう。