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やり投げ大国チェコでも大人気! 笑顔の金メダリスト北口榛花が世界を魅了するワケ「チェコの選手ってことでいいよね」SNSで国籍変更を願う声も
text by
及川彩子Ayako Oikawa
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2024/08/14 19:11
パリ五輪やり投げで金メダルに輝いた北口榛花。銀メダルのファンダイク (南アフリカ/左)、銅メダルのオグロドニコワ(チェコ/右)とともに表彰台で喜びを表現した
「チェコのやり投げ選手たちが五輪を制覇した。北口榛花とニコラ・オグロドニコワで2つのメダル獲得」
「チェコが第二の故郷である日本のやり投げ選手が、今日、やり投げで日本人初のオリンピックチャンピオンになった」
このツイートへの返信は北口がいかにチェコで受け入れられているかを物語っている。
「おめでとう! ハルカは好感の持てる選手ですね。ニコラと同じくらい応援しています。 ガールズ・ブラボー」
「チェコ語のインタビューも素晴らしかった」
こんなユニークなものもあった。
「チェコのやり投げ学校から五輪チャンピオンが出たね」
「もう、うちの(チェコの)選手ってことでいいよね」
さらには日本のファンがドキッとするようなコメントもあった。
「そろそろ彼女が代表する国を変えてもいいんじゃないかな」
チェコのファンたちが北口を受け入れ、自分達の国で育った金メダリストと思っていることが分かる。
スロバキア出身で現在、チェコ在住の世界陸連スタッフはこんなことを教えてくれた。
「チェコはやり投げ大国なので、もちろんチェコ選手のことを応援している。だからチェコ選手が負けると『情けない』『コーチはなぜチェコ人ではなく、日本人を教えているんだ』なんてコメントが出ることもある。でもそんなチェコ贔屓の人もついつい応援してしまう魅力をハルカは持っている。チェコ選手は喜怒哀楽をあまり見せず、愛想がなかったり、インタビューで素っ気ない受け答えをする選手も多い。ハルカは頑張ってチェコ語を勉強してチェコ語を話すし、何よりいつもニコニコして、楽しそうに笑う。これまでチェコ人が持っていた陸上選手へのイメージを変えたと思う」
やり投げ大国の威信を懸けて臨んでいるチェコ選手たちは勝って当たり前、負けたら「恥」という世界での戦いを強いられているため、不用意に泣いたり笑ったりできないのかもしれない。
やり投げの世界の勢力図が変化
いずれにしろ北口の存在はチェコ陸上界やファンに新たな風を吹き入れたことは間違いない。
前回の東京五輪で中国の劉詩穎が金メダルを獲得して以降、女子やり投げの勢力図には変化が見られる。