パリの空に北口榛花の“答え”はあったのか

「オリンピックの金メダルを獲ったら、満足できるものなのかなと思っていたんですけど……。うーん、65mじゃ満足できないので。今シーズン最初はもう頑張れないかもと思うときもあったんですけど……」

　思わず声を詰まらせ、笑顔が崩れる。

「また頑張る理由ができてすごくホッとしました」

涙の北口榛花をねぎらうチェコ人コーチのダビド・セケラック氏　©Ryosuke Menju/JMPA

　その後、記者たちの質問に時折冗談を交えて答えていく。「満足できない」という言葉が信じられないほど、表情は笑みに満ちている。ただ、投擲について聞かれると、潤んだ目で何度も上を向き言葉を口に出していた。

　金メダルは安堵できる証となった。ただ、パリの空に答えはなかった。だからだろうか、宙を見上げる時だけは笑顔はなかった。