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《独占インタビュー》大迫傑が語るパリ五輪マラソン「表彰台を目指したいと強く望んでいる自分がいる」 “史上最難関コース”にどう挑むか
posted2024/08/10 11:00
text by
涌井健策(Number編集部)Kensaku Wakui
photograph by
Shota Matsumoto
発売中のNumber1101号掲載の[フロントランナーの戦略]大迫傑「マラソンはビックリ箱だと思う」より内容を一部抜粋してお届けします。
石畳のテクニカルな路面と最大156mの高低差。パリ市内を巡る42.195kmは「オリンピック史上最難関」とも言われる。オペラ座、ルーブル美術館などを巡り、エッフェル塔を見た先に迎えるゴールで、日本のエース・大迫傑は何を掴もうとしているのか。7月中旬、アメリカからスイスに移動したばかりの本人に話を聞いた。
――パリに向けて仕上がってきましたか?
「順調ですね。ポートランドで1万mのレースで刺激を入れ、ボルダーでは距離も積む中でスピード系のメニューも入れられたので、いい流れで練習ができています。実はもう少しアメリカに滞在予定だったんですけど、予想以上に乾燥して暑かったので、気候が落ち着いた場所でコーチのピート(・ジュリアン)とも合流して最終調整をしようと思い、変更しました」
――東京五輪の前と比べると、直前期の過ごし方が違うように見えます。
「前回と比べて気持ちの面では力みなくやれてきていますし、練習の面では本番への流れが全然違います。東京の時はコロナ禍で、五輪前最後のマラソンが17カ月前とかなり間隔が空いたのに対し、今回は4月にボストンを走ったので、それも利用しながらの別パターンの調整になってます」
――2023年1月、大迫選手から「中庸」という言葉が出て驚いたことがあります。世界トップの選手と自分のレベル差を認識し、「もっともっと」と走行距離を追い求め過ぎる大迫選手に対して、コーチが手綱を引いた言葉だと理解していました。いわば「やり過ぎるな」と。
「うーん、中庸をどう捉えるか自分の中でも揺れていて……。ピートの言葉は今でも腑に落ちているんですけど、それ以上に、パリ五輪でいい結果を出したい、表彰台を目指したいとすごく強く望んでいる自分がいるんです。だから、実はマイレージ(走行距離)も年々増えているし、ワークアウト(負荷の高い練習)の質も上がっている。だから中庸って何だろうって(笑)。これ、儒教の概念ですよね? 現代の競争の中で孔子の言葉を大切にし過ぎると、取り残されてしまうな、と。結局は強く望み、そのために何をするかが大切ですから」
――距離やスピードを追い求め続けている。
「スピードに関しては、年齢による影響なのか、出場するトラックレースが減っているせいなのか、自分一人では出力を上げにくくなっています。でも、そこは若手選手に練習パートナーになってもらったり、メニューを工夫したりすることで補えていて、自分でも復帰後の短いスパンでよくここまで戻せたなと思っています」
3年前と比較したときに今は全然違う自分になっている
5月、大迫に話を聞く機会があり、話題に上ったのがNIKEのシューズ「ペガサス」。40年以上続く同社の定番シリーズで、大迫も10年以上愛用する。自身の歩みを、今も進化するそのシューズに重ねていた。