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柔道・村尾三四郎の本音「(ルーレット)僕には回ってこないだろう」鈴木桂治監督は「さすが国際柔道連盟…」パリ現地記者が見た“リネール確定ガチャ”の真相
text by
雨宮圭吾Keigo Amemiya
photograph byAFLO
posted2024/08/07 18:32
柔道混合団体決勝代表戦でリネールに敗れ、悔しがる斉藤立
メダルセレモニーの準備が進む間もフランスのファンは歌っていた。70年代のフレンチディスコソング『Alexandrie Alexandra』や往年のフランスのヒットソング『Que je t'aime』、サッカーの試合でもおなじみの『Seven Nation Army』などを大合唱。セレモニーが始まると各国の選手がひとりずつ名前を呼ばれ、メダルを授与される。日本代表では、なぜか斉藤にひときわ大きな歓声が送られた。
それはフランスの英雄と戦って敗れた相手への激励なのか、それとも引き立て役となったことへの哀れみだろうか。
男子日本代表の鈴木桂治監督は、敗戦を重く受け止めつつ、勝敗を大きく左右したルーレットについてはこう語った。
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「これも運命かなと思いますし、さすがIJFかなと。盛り上げるなと。細工してるとかじゃないけど、盛り上がるなと思いましたし、あそこで(ルーレットが)当たったことが斉藤立という選手の運命なのかなと思います」
一番手で登場し、内股で鮮やかに一本勝ちした村尾三四郎に、代表戦は自分の階級に回ってきてほしかったか?と尋ねると、何かを悟ったかのようにこう言った。
「僕は戦える準備はしていたけど、僕には回ってこないだろうと思っていました」
リネールはレキップ紙のインタビューで「これは運命だった。映画のように、こうなるべき筋書きだったんだ」と答えている。万が一、斉藤がリネールを破っていたら、日本側にとっての伝説の日になっていた。ウルフアロンの起用も議論されたという中、最終的に斉藤を送り出した首脳陣にとっては決してネガティブな思いだけではなかっただろう。
そもそも日本には代表戦にもつれ込む前に勝機があった。
鈴木監督「4つ取る想定」の誤算
決勝戦の試合順と日本の起用選手は以下の通りだった。
男子90kg以下級 村尾三四郎
女子70kg超級 高山莉加
男子90kg超級 斉藤立
女子57kg以下級 角田夏実
男子73kg以下級 阿部一二三
女子70kg以下級 高市未来
鈴木監督は当初の想定として村尾、角田、阿部、高市で4つ取る考えだったと明かしている。リネールと相対する90kg超級、78kg超級の素根輝が負傷で使えない70kg超級は劣勢と見ていた。
一番手の村尾は目論見通りに快勝。斉藤は敗れたが、二番手の高山が一回り大きい78kg超級銅メダルのロマヌ・ディコから金星を挙げた。角田も2階級上の銅メダリスト、サラレオニー・シシケに巴投げで一本勝ちした。