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アーティスティックスイミング、「課金制」抗議で日本の順位がジャンプアップのナゼ…他にも有料の競技はある? そもそもなんで有料?
text by
松原孝臣Takaomi Matsubara
photograph byJIJI PRESS
posted2024/08/07 17:12
パリ五輪アーティスティックスイミング、チーム・テクニカルルーティンで演技する日本チーム
男子団体総合決勝、日本の最終種目はあん馬。内村航平の演技に対し、ジャッジは着地に至る技を認めず13.466点とした。日本は4位となり、一度はメダルを逃す順位に落ちた。
そこですぐさま日本側はインクワイアリーを行った。20分ほど時間を要しただろうか、認定されたことで内村の得点は14.166点に変更され、日本は銀メダルを手にしたのである。
「日本が買収した」!?
このとき、日本側が審判にドル紙幣を渡している写真とともに「日本が金銭を渡した」と、単なる事実としては間違いではないが、誤解を招く記事も掲載された。そのため、「日本が審判を買収した」と誤解する人達が現れ、ひと騒動あったという。それもあって、ロンドン五輪後は現金を手渡しにするのではなく、振り込みに変更されている(ちなみに通貨もスイスフランに変わった)。
パリ五輪でもインクワイアリーは活用されている。
例えば、7月31日、男子個人総合決勝のつり輪で日本が行っている。
個人総合でも金メダルを獲得した岡慎之助のつり輪の演技のうち、認定されない技があり、Dスコアが5.9から5.7に下げられた。それに対して日本側がインクワイアリーを行い、Dスコアが元に戻ることになった。
ちなみに個人総合に出場していたもう一人、橋本大輝の演技に対してもインクワイアリ―を行ったが、こちらは認められなかった。
岡と、銀メダルだった張博恒(中国)との最終的な得点の差は0.233。3種目めのつり輪で認定されないままであったなら、より競り合う中で競技が進んでいたことになるだけに、駆け引きも含め、予断を許さなかったかもしれない。インクワイアリーによる0.2は大きかった。
有料のわけは?
ところで、なぜこれらの競技では抗議が有料とされているのか、疑問に思うかもしれないが、その理由は「むやみに各チームが乱発するのを防ぐため」だという。どちらの競技も、繊細な技を繰り出す採点競技であるだけに、映像での確認も相応の時間などを要することも大きいだろう。
アーティスティックスイミングは抗議が功を奏し、今後のメダル争いにつなげることができた。
一度はどん底に落とされ、でも笑顔で終えることができた日本チームの戦いは続く。