オリンピックPRESSBACK NUMBER
“タメ口”で「なみ」「ちぃ」と呼び合い…シダマツの意外な関係性「志田千陽が松山奈未に惚れ込んだ」笑顔の銅メダルのウラ側「なみ泣きすぎ(笑)」
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph byRyosuke Menju/JMPA
posted2024/08/06 12:21
銅メダルを獲得し、2人でハートのマークを作るシダマツペア。志田千陽(右)と1歳年下の松山奈未(左)は「なみ」「ちぃ」と呼び合う仲だ
「本当に今日が大事な試合で、これで金メダルが取れなくなったなっていう思いが……込み上げてきてすごく……悔しかったです」
今年3月、パリ五輪と同じ会場で行われたフランスオープンでは2-0で勝利した相手。2人とも短髪でタンクトップ型のユニフォームを着用し、鍛えた肉体が見て取れるペアだ。パワーでは及ばないが、勝てない相手ではなかった。しかし、松山の動きにどこか輝きがない。レシーブでミスをし、天を見上げる。相手に押し込まれ、膝をつく。志田が必死につなぐも、松山がなかなか得点を重ねられない。
第1ゲーム。16-17と、日本がなんとか詰め寄っていた場面。松山が相手の前側を狙って後ろからドロップショットを放つも、ネットの最上部に弾かれ、ポトリと自陣側へ落ちる。その瞬間、志田が少し苦笑いを浮かべながら、肩を落とした。
「ミスをすごく恐れて思い切って行けなくて、レシーブでももっと前に落として自分が作っていけるところがあったんじゃないかなって思います」(松山)
それは得点源からのSOS信号のように聞こえた。敗戦後、普段は顔を上げ、ニコニコと取材に応じる志田も、松山が話している間、呆然と下を向き続けていた。2人の目には涙の跡があった。
3位決定戦、シダマツが笑顔で抱擁を交わすまで
迎えた3位決定戦、マレーシアのパーリー・タンとムラリタラン・ティナアとのペアの試合。プレー中、志田から祈るように「なみ!」という声が飛ぶ。
序盤、1-1の状況で松山のレシーブ。一瞬下を向き、意を決したように相手の持つシャトルに照準をあわせる。一度レシーブを相手の後ろ側へと運んだ後、その返球をタンとティナアの間に押し込む。2つのラケットが飛び出て、マレーシアのペアがなんとか日本のコートへ戻そうとすると、前に出た松山が誰もいないネット際の左側スペースへとシャトルを落とす。松山がひとりで点をもぎ取った。