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“タメ口”で「なみ」「ちぃ」と呼び合い…シダマツの意外な関係性「志田千陽が松山奈未に惚れ込んだ」笑顔の銅メダルのウラ側「なみ泣きすぎ(笑)」 

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齋藤裕

齋藤裕Yu Saito

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photograph byRyosuke Menju/JMPA

posted2024/08/06 12:21

“タメ口”で「なみ」「ちぃ」と呼び合い…シダマツの意外な関係性「志田千陽が松山奈未に惚れ込んだ」笑顔の銅メダルのウラ側「なみ泣きすぎ(笑)」<Number Web> photograph by Ryosuke Menju/JMPA

銅メダルを獲得し、2人でハートのマークを作るシダマツペア。志田千陽(右)と1歳年下の松山奈未(左)は「なみ」「ちぃ」と呼び合う仲だ

互いを「なみ」「ちぃ」と呼び合う2人

 そんな派手さとは裏腹にプレーは献身的だ。座右の銘は「コツコツが勝つコツ」。本人は「松山など身近にすごい才能を持っている選手が多くいますが、自分は他の人が1やって身につくところを100ぐらいやらないと身につかないタイプ」と厳しく自己分析する。

 日本代表の女子ダブルスコーチ・中島慶によれば、志田は合宿中も1時間のレシーブ居残り練習を敢行。華やかさで霞むが、努力の人だ。そんな志田が惚れ込んだ才能が1歳年下の松山だった。

 高校時代、ジュニアの日本代表チームでペアを組むことになった2人。当時、高校は別々だったものの、1年違いで同じ社会人の再春館製薬所へと進み、ペアを継続。志田は松山について「バドミントンの才能がすごい」と手放しで絶賛する。

 志田は普段、松山のことを「なみ」と呼び、対して松山は志田のことを「ちぃ」と呼ぶ。お互いに“タメ口”でプレースタイルも臨機応変に対応。ただ、後衛で志田が拾い、前衛の松山が相手のいないところにシャトルを落としていく形こそがシダマツの理想の得点パターンだ。

 明るい性格の志田とは対照的に、松山は天然で人見知り。独特な空気感をまとう松山は、コートに立つと天井からのカメラを見ているかのように、天性のセンスで相手が届かないスペースへとシャトルを着地させていく。

本気だった松山奈未の「金メダル宣言」

 取材対応では志田の後に「同じです」と繰り返しがちで、多くを語らない松山。そんな松山が自らの口で語った目標があった。

 5月に行われたパリ五輪代表発表の記者会見。記者陣から目標を問われて、松山は確認するように志田を見た。「いい、いい」と白い歯を見せながら頷く志田を見て、松山も笑いながら「金メダルです」と宣言する。

 どこか冗談交じりに「言わされた」ようにも見えたやりとり。しかし、実際は2人が本気で抱いていた野望だった。準決勝で中国の劉聖書(リュウ・シェンシュ)譚寧(タン・ニン)のペアにストレート負けを喫した時、松山は言葉を詰まらせ、声を震わせるようにこう語っていた。

【次ページ】 3位決定戦、シダマツが笑顔で抱擁を交わすまで

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