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雨に打たれた開会式の影響は…“日本の旗手”フェンシング江村美咲「まさかの3回戦敗退」現地で何が起きていた? 記者に語った“原因不明の違和感” 

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齋藤裕

齋藤裕Yu Saito

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posted2024/07/31 12:26

雨に打たれた開会式の影響は…“日本の旗手”フェンシング江村美咲「まさかの3回戦敗退」現地で何が起きていた? 記者に語った“原因不明の違和感”<Number Web> photograph by JMPA

金メダル候補として期待を集めたフェンシング女子サーブルの江村美咲。世界ランク1位で迎えたパリ五輪の個人戦は3回戦で幕を閉じた

江村美咲が言葉をつまらせた“ある質問”

 話している最中にもグラン・パレの会場に大歓声が響き渡る。この歓声を浴びるはずだった金メダル候補は、時折その歓声が静まるのを待って、言葉を選びながら真摯に受け答えを行う。言い訳をしない江村。ただ、「特にケガはない」と言ったが、「選手村に入る前の合宿中に何かあったのか」という質問に対し、白状した。

「ちょっと軽いケガ、というかひどくないんですけど、ケガ手前の痛みがあって。最後に休まざるを得ない部分はありました。でも、今日までそれを引きずったとは思わないです」

 人知れず抱えていた太ももの痛み。詳細は明かされず、その痛みも言い訳にしようとはしなかった。合宿中に負った痛みは確実に世界選手権2連覇の王者の自信を侵食していた。

「足が動かなかったのがなぜなのか、今もピンときていない」

「ここは動くところだと分かっているのに、うまくいかなかった」

 言葉が悲愴感をまとう。ある質問には数秒言葉をつまらせた。支えてくれた人について聞かれた時だ。

「本当にたくさんの人に支えてもらって、ここに……立てたと思いますし、期待もたくさんしてくださって。そういった方に胸を張ってお礼を言える試合をしたいというのが一番強い気持ちだったので、本当になさけない気持ちです」

 真面目で完璧主義。そして責任感が強い。言い訳を口にせず、重圧も痛みも怖さもすべて背負い込もうとしているように見えた。

「メダルを取れなくても人生の終わりじゃない」

 支えてくれた人のひとり、戦いをベンチサイドから見守ったジェロームコーチが大会前に語っていた考えだ。今こそ届いてほしい。

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