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雨に打たれた開会式の影響は…“日本の旗手”フェンシング江村美咲「まさかの3回戦敗退」現地で何が起きていた? 記者に語った“原因不明の違和感”
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph byJMPA
posted2024/07/31 12:26
金メダル候補として期待を集めたフェンシング女子サーブルの江村美咲。世界ランク1位で迎えたパリ五輪の個人戦は3回戦で幕を閉じた
「もっともっと動いて戦いたかったのに…」
ドーム型の天井が特徴のグラン・パレに足を踏み入れた江村。その初戦から異変はあった。世界ランク1位の江村が最初に対峙したのは、ウクライナのオレナ・クラバツカ。最初に4点を取られ、なんとか追いつくも突き放せず、15点先取の個人戦において1点勝負となる14-14まで追い込まれた。
初戦だから苦戦したのか? 硬い表情の江村は首を横に振る。「点を取り急がないようにと気づけた試合だった」。相手は強い選手だと称えた。ただ、最終的には勝つことができたのだ。どこで気持ちを切り替えられたのか? 聞くと早口で率直な思いを語っていた。
「いや、全然切り替えられていなくて、最後まで正解がわからず、何が悪いのかわからず苦しい試合展開だったんですけど、ベンチからの声とかでなんとか立て直せたと思います」
前日のエペ個人男子、金メダルを取った加納虹輝も初戦は「気持ちが緩んでしまった」と苦笑いをしていた。だから、江村も同じく初戦の難しさを語るのかと思い、質問した。しかし、違った。語られたのは、原因不明の違和感だった。
3回戦、韓国の選手に攻め立てられる。11点目を取られ、地団駄を踏むように足の底を何度も床に打ち付ける。13点目。江村は思わず下を向く。何かに迷い戸惑っているうちに7-15で試合は決した。
「とくにその負けた試合は……1試合目からですけど“取り急ぎ”が目立って。2試合目までに修正したかったんですけど、足ももっともっと動いて戦いたかったのに、足が止まって……。それがなんでかっていうのはちょっと、まだ自分ではわかっていないです」
金メダル候補の重圧、開会式での旗手、グラン・パレという会場。取り囲んだ報道陣はその理由を探すように江村に丁寧に質問を重ねる。しかし、江村から確たる答えは返ってこない。
「舞台の問題ではなく、自分の弱さ」
「東京五輪と比べてリラックスして挑めた」
「(金メダル候補という声は)チャレンジャーの気持ちでプレッシャーには感じていなかった」