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卓球まさかの大波乱「これはやばいぞ…」張本智和と早田ひなが“謎の北朝鮮ペア”に完敗、現地で何が起きていた?「早田は一瞬、笑みを見せて…」
text by
齋藤裕Yu Saito
photograph byAsami Enomoto/JMPA
posted2024/07/28 17:55
現地時間7月27日、パリ五輪の卓球混合ダブルス1回戦で北朝鮮ペアに敗れた早田ひなと張本智和
ライバル中国ペアも“まさかの苦戦”を見つめていた
第4ゲーム、張本が得点を重ね、右手で縦長の楕円を描き、拳を握りしめる。しかし、相手も対策をしてきたのか食らいつき、11-11に。ここで隣のコートでの試合が終わり、場内が大きな拍手に包まれる。
隣のコートにいたのは、王楚欽(ワン・チューチン)と孫穎莎(スン・イーシャ)の世界ランク1位ペア。日本が決勝で金メダルを争うと目されていた最強ペアだ。前の試合が長引き5分遅れで登場した2人が4-0でエジプトのペアを退け、帰り支度をしながら日本のコートに視線を注いでいる。場内を外周しながらの帰路で中国語の声援を浴びつつ、会場中央をじっくり見る2人。その光景は明らかな異変を物語っていた。
12-13から張本がポイントを奪い返し、13-13。このゲームは落としてはならない。そんな思いを込めてか、張本は左手で地面を叩く。しかしその後、2点を連取され、ついに崖っぷちに追い込まれる。競技場の客席後方にある記者席にいた日本人は荷物をまとめ、移動する。次のゲームでの負けを想定して取材エリアで待機するためだ。
5ゲーム目。同じ現地時間16時30分開始組はすべて退場している。コートには張本と早田、そして強打をものともしない24歳の「男の子」と、おかっぱヘアで着実にラリーをつなぐ21歳の「女の子」だけが残った。
3-3。インターバルの時間、タオルで顔を拭く前に張本がベンチサイドを見た。いや、正確には見つめた。何か助けを求めるように。目があった田勢監督がタイムアウトを告げる。
「こっちがやるべきことというか、『いろいろできることがあるのに……』という話をしました。ちょっと勇気を持って変えた部分はあった。(早田)ひながフォアに打ち始めたり、ある程度実行できたけど(ゲームカウントが)1-3なので……。追い込まれた状況での戦術だったので、苦しかったです」