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「小川(智大)選手のコメントは何かにつながる」男子バレー柳田将洋32歳が“落選に関する取材”を断らない理由「選ばれなくても誇りを持って」
text by
米虫紀子Noriko Yonemushi
photograph byKiichi Matsumoto
posted2024/07/27 06:01
男子バレー五輪メンバーの選考について言及した柳田将洋(東京グレートベアーズ)。東京五輪では落選を経験しただけに、その言葉は重い(2023年撮影)
メンバー選考が大きな話題になるのは、注目される競技になったということの裏返しでもある。
「それ(選考)が注目されること自体はいいことだと思う。サッカーなどもそうですけど、やっぱり世間の注目度が高いほど、ディテールにまで目が行くので。バレーのパリ五輪の当落線の話もそうですし、落選した小川選手のコメントが記事になっていたりとか。それは、何かにつながることだと思う。
僕もそうでしたけど、どうしても毎回、オリンピックの出場権を獲得した後には、当落というのは存在して、必ず落ちる選手がいる。そういった同じ境遇に立った選手にとって、(過去に同じ経験をした選手の話は)何か素材になるものだと思うんです。僕もそうですし、小川選手だったり、(エバデダン・)ラリー選手、富田(将馬)選手もそうかもしれない。そういった選手の思いというのは、今後の日本のバレーボールにしっかりつないでいってもらって……。
同じ境遇の選手が、オリンピック(の選考)に落ちたからって、バレーボールをやめるなんてことはもちろん起こってほしくないわけで。しっかりとね、そこにも誇りを持ってというか、自信を持って、今後もバレーを続けてもらうためにも、注目されることによって活字化されて、皆さんやこれからの選手の目に留まって欲しいというのはあります。
選手は、落ちた時の気持ちはつらいと思います。なかなかコメントはしづらいでしょうけど、絶対そういうものって、ファンの人の目にも、競技をしている若い選手の目にも留まる。今の日本代表がどういった状況で、選手はどういう心境でバレーをしていて、どれほどのものを懸けてやっているのかを知るきっかけにもなるので、非常に重要なことだと思います」
東京五輪当時、前年まで主将を務めていた柳田の落選は衝撃的で、大きな話題となった。その中で幾度もその落選に関する取材に答えてきたが、この先自分と同じ境遇になる選手のためにもと、そこまで考えていたとは……。
「やっぱり戦うのは、選ばれた12名の選手」
「おそらくパリ五輪でも誰かが(同じ立場に)なるんだろうな、と思いましたし、そこに何かつながればいいなと、ちょっとお節介な心で答えたところはあります。コメントする頃にはもう気持ちも落ち着いていましたし。
ただ、あまり僕が落ちたこと自体にフォーカスが行ってほしくないなとは正直思っていました。やっぱり戦うのは、選ばれた12名の選手であって、僕はもうそれに残らなかった選手でしかないので。それは広く言えば僕だけじゃなく、何千かわからないですけど、いっぱいいる選手の中の一人という感覚でしたから。確かにそれまでの代表での歩みというのはありましたけど、僕としては、これから東京五輪を戦う選手にフォーカスが当たって欲しいなとも思いながらコメントしていました」