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「私が先に泳ぐ!」フランス版小池百合子vs橋本聖子? パリ五輪直前、セーヌ川水質をアピールするパリ市長とスポーツ大臣の仁義なき場外戦
text by
広岡裕児Yuji Hirooka
photograph byGetty Images
posted2024/07/23 11:02
セーヌ川を泳ぐパリ市長、アンヌ・イダルゴ65歳。水はやっぱり濁って見えるが…
2022年5月にエリザベット・ボルヌ内閣のスポーツ・オリパラ大臣、2024年1月にはガブリエル・アタル内閣発足とともに、国民教育・青少年大臣も兼任した。ところが、自分の子供は有名私立学校に通わせ、公立学校を馬鹿にするような発言をしたとして、1カ月後に辞任を余儀なくされ、スポーツ・オリパラ大臣のみになったのである。
移民市長とお嬢様大臣、仁義なき非難合戦
これに対して、イダルゴ市長はスペイン移民労働者の家庭で育ち、14歳の時にフランス国籍を取得(今も二重国籍)。普通の大学の修士しかとっていない。
7月18日付のル・モンド紙は、13日にスポーツ・オリパラ大臣がセーヌで泳いだことを知ったイダルゴ市長が「ウデア=カステラの自信過剰に激怒し」、そして「スポーツ・オリンピック・パラリンピック大臣が、ダイビングというか、ようやく汚染が除去された川に頭をぶつける映像を見て、大笑いした」と報じた。
一方、同紙によれば、ウデア=カステラ大臣はイダルゴ市長を「敵を作ることを糧にしている。嫉妬深い人、私が大臣に就任して以来、私を軽蔑的にじろじろと見て、私を困難に陥れようとしてきたと思います」と評し、オリンピックで新体操とバドミントンの会場になるポルト・ド・ラ・シャペル・アリーナの開場式では、イダルゴ市長が彼女より先に挨拶しようとしたとして、「大臣に向かってすることではない」と非礼を難じたという。
ウデア=カステラ大臣のセーヌ遊泳は、民放RMCテレビの独占放送。そのニュースチャンネルであるBFMのスタッフともう一人、トライアスロンのユニフォーム水着を身につけた、パラトライアスロンの東京五輪金メダリスト、アレクシ・アンカンカン選手がいるだけだった。観客席工事のために、見物人も入れない。
アンカンカン選手は、昨年テスト大会でセーヌ川の水質悪化のために水泳が中止された際には、「バスケットボールの試合をハンドボールの球でやるようなものだ。別のスポーツになってしまう」と悔しがり、「セーヌは他よりも汚くない。ロッテルダムの世界選手権の時はもっと水は澱んでいたし、燃料油の臭いがした」と本番では泳ぐことを熱望した。
彼はセーヌ川でのレースをアピールするために、「もし、パラリンピックの旗手になったら、セーヌで泳ぐ」と宣言していたが、この11日にまさに旗手になることが発表されたのである。アンカンカンによれば、ウデア=カステラ大臣が一緒に泳ぐことは前から計画されていたわけではないという。どうも、大臣側がこの話に便乗したようだ。