オリンピックPRESSBACK NUMBER
「私が先に泳ぐ!」フランス版小池百合子vs橋本聖子? パリ五輪直前、セーヌ川水質をアピールするパリ市長とスポーツ大臣の仁義なき場外戦
text by
広岡裕児Yuji Hirooka
photograph byGetty Images
posted2024/07/23 11:02
セーヌ川を泳ぐパリ市長、アンヌ・イダルゴ65歳。水はやっぱり濁って見えるが…
市長も負けずにセーヌを遊泳
そして17日、いよいよイダルゴ市長のセーヌ遊泳だ。午前10時前、市役所から近い、マリー橋とシュリー橋の中間。来年からはセーヌ川の水泳場の一つになる。特設のブルーシートの浮き桟橋が設けられ、そこからそろそろと入る。沿岸は鈴なりの人で、ゴムボートからもテレビクルー、カメラマンが狙っている。150人の報道陣が集まったという。閑散としていたウデア=カステラ大臣の時とは大違いだ。
既報のようにイダルゴ市長は、6月23日のオリンピック・デーに泳ぐ、もしダメでも1週間後にと宣言していたが、マクロン大統領の突然の国会解散で、「選挙後に延ばす」とした。もっとも、23日だろうが、30日だろうが、大腸菌の数が道頓堀の2倍3倍、という状況はつづいており、遊泳することはできなかった。
その後好天の日が続いたこともあって、ようやく7月に入り、トライアスロン開催の最低基準である100mlあたり大腸菌1000以下になったのだ。
マクロン大統領は体よく欠席
イダルゴ市長もウエットスーツだが、半袖半ズボンタイプ。水泳帽はかぶらなかった。五輪組織委のトニー・エスタンゲ委員長、イル=ド=フランス地方長官、パリ市スポーツ五輪担当副市長もお供。ウデア=カステラ大臣が泳いだ13日よりは、水の流れは落ち着いている。
マクロン大統領も2月末に、日付を指定せずに川で泳ぐと約束していたが、6月23日の市長の招待を「拒否」し、この新しい日付についても、「他の優先事項」のために忙しいと断った。彼自身の「クレイジーな国会解散」の後処理がいい口実になったようだ。
パフォーマンスが一通り終わって、地下鉄の駅に戻ると、明日から閉鎖だという。このほか、セーヌ川に近い駅は軒並み閉鎖、自動車の通行も事前に許可を取ったものだけになった。
その後も連日、セーヌ川流域の交通規制や水質・水量、そして船乗りたちがシミュレータで一所懸命練習したとか、数隻の船によるセーヌ航行の演習がおこなわれたとか、開会式の装飾が続々とできているとか、開会式のダンサーが待遇の違いに不満でスト予告だとか、パリで報じられるのは開会式の話題ばかり。まるで開会式さえうまくできれば、オリンピックは終わってしまうみたいだ。はたして、フランス版小池vs橋本の勝者はどちらだったのだろうか?