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藤井聡太七冠“おやつ手筋”と棋士お菓子伝説「ぴよりん」は今も名古屋駅で行列…加藤一二三は「板チョコ6枚、カルピスをジャーにいっぱい」
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph by日本将棋連盟
posted2024/07/22 06:00
王位戦第2局の藤井聡太七冠と、2日目午後のおやつに注文したテリーヌ・ド・ショコラ、アイスティー
渡辺の勝ち筋と思われたが、最終盤の局面で長手順の即詰みを逃してしまった。藤井は渡辺の王手をきわどくかわし、136手で逆転勝ちした。終局時刻は21時13分。
渡辺は終局後に「詰みそうだなと思ったけど、最後は見えなかった」と語った。藤井は自玉の詰み手順を分かっていた。
メディアはその結果について、「渡辺が大逆転負け」「藤井がAI(人工知能)の形勢評価の1-99からどんでん返し」などと報じた。
実は、詰み手順の最初の王手は二択で、A以下の順ならかなり複雑だが詰んでいた。渡辺が指したB以下の順も詰みそうだが、わずかに詰まなかった。詰みに至る王手の確率は50%だったが、渡辺は1分将棋の秒読みで読み切れないまま指して負け筋となった。冒頭で記したように、渡辺は「終盤は弱い方だと自覚」していた。それが図らずも現実のものとなってしまった。
渡辺が久々に「おやつ」を対局室で食べた
さて近年のタイトル戦では、対局者への食事だけでなく、10時と15時に出す「おやつ」も注目されている。
中でも藤井が注文したものがネット情報で広まると、当日のうちに多くの客が店に来て完売したり、超人気商品になったりする。「観る将」と呼ばれる人たちは、将棋の内容はよく分からないとしても「おやつ」には身近に感じる側面はあるだろう。
王位戦第1局が行われた名古屋市では、事前に「勝負おやつコンテスト」を実施。応募された約100品目から絞り込んで8品目を選んだという。実際に藤井が注文すると、その食品と店が注目されて売り上げが伸びる。
2020年以降のコロナ禍の状況では、タイトル戦で対局者は「おやつ」を別室で食べるのが通例となった。しかし王位戦第1局で渡辺は、コロナ禍の以前のように対局室で食べたいと求めて了承された。藤井は従来通りに別室で食べた。前者は持ち時間のロスをなくすことができ、後者は気分転換になる。渡辺が前者にこだわったのは、先輩のタイトル経験者としての矜持かもしれない。
タイトル戦の対局は、ABEMAなどでフルタイム中継される。「おやつ」を頬張る姿を視聴者に見せることへの賛否はあると思うが、歴代のタイトル経験者たちは気にしないで食べていた。そう言えば、カーリング女子の「もぐもぐタイム」は有名な光景で、ゴルフやテニスのプロ選手が試合の合間にバナナを食べるのは栄養補給である。
2024年タイトル戦第1局…藤井のおやつ全調査
藤井が今年のタイトル戦で注文した「おやつ」を、いずれも第1局を例に紹介する。