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スポーツ・インテリジェンス原論BACK NUMBER
「翌日に“大ゲンカ”ですよ」田中史朗が語るエディー・ジョーンズとの初対面…あの大金星はフミさんの衝突から始まった「僕はリーチを推しました」
posted2024/07/05 17:00
text by
生島淳Jun Ikushima
photograph by
Kiichi Matsumoto
田中史朗。
ラグビーワールドカップ(W杯)3回出場。彼がラグビー界から引退したいま、その笑顔を見ると、どうしても「フミさん」と呼びたくなってしまう。
引退しても田中はいそがしい。この6月、日本代表ヘッドコーチ(HC)のエディー・ジョーンズに乞われて、日本代表の合宿で自らの経験を語った。
「日本代表としてプレーできるのは、あなたたちだけなんですよ、そのことを誇りにして欲しいと話しました。おまけにチームディナーの乾杯のコールもさせてもらいました(笑)。テーブルではトレーニングスコッドの若い選手たちと話をしたんですが、彼らはちょっと大人しかったですね。コーチ陣から『リアクションが薄いかもしれない』と聞いてはいたんですが、ラグビーはコミュニケーションのスポーツなので、とにかく反応していこうと話しました。反応すること、話すことが信頼を生むことになるので」
合宿だけではなかった。イングランド戦の前日に行われたジャージ授与式では、プレゼンターの役割を担った。ジョーンズHCがその役割を田中に託したのは、彼が日本代表の歴史の一部を担ってきたからだ。
「ジャパン」の特別な想い
田中の代表歴は2008年から2019年まで、足掛け12年におよぶ。それはどん底に喘いでいた日本代表が、世界から尊敬を得るまでの過程そのものである。実際、田中自身の代表への思いはひと一倍強い。
「伏見工業の時に高校代表にも選ばれてたんですが、国際情勢の影響で僕たちの代は遠征がなかったんですよ。はじめて日本の代表としてプレーしたのは、U19でした。それまでの経験とはまったく違っていて、感情が高ぶりました。いまの若い選手たちにもその誇りを感じつつ、ラグビーを楽しんで欲しいと思ってます」