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「ケガだけが心配」の声も…DeNAオースティンが全力プレーをやめない深いワケ 本人が明かす「監督に胸ぐらを掴まれた日」「甲子園が大好きなんだ」
text by
石塚隆Takashi Ishizuka
photograph byJIJI PRESS
posted2024/07/01 11:03
日々、ユニフォームを泥だらけにしながらプレーするオースティン。ジャッジとも切磋琢磨したバリバリのメジャーリーガーはなぜ全力プレーを続けるのか
「自分の数字よりも、フォーカスしているのはチームの勝利。もちろん自分が打つことで勝利に貢献できればうれしいけどね」
初来日したときからオースティンは変わらない。バリバリのメジャーリーガーとして入団したが、決して驕ることのない日本野球をリスペクトした謙虚な姿勢。ただ純粋に勝ちたい、優勝したいという気持ちだけで、ブレずに野球と向き合っている。
自分の野球人生の中でも“底”だった時期
だからこそ過去2シーズンは相当苦しいものだった。怪我や手術が相次ぎ、まともに戦力になることのできない状態。本人はもちろん、長打を打てる右のクラッチヒッターの不在はチームにとっても痛手であった。
オースティンは記憶をたどり、当時のことをシリアスな表情で語る。
「自分の野球人生の中でも“底”だったというか、メンタル面でも非常に厳しい時期でした。とくに昨年終盤(9月)に右鎖骨関節の手術をしたときは、自分の人生でこういう瞬間が訪れるとはまったく想像していませんでした……」
荒波のように幾度も襲ってくるアクシデント。心が折れそうになった瞬間は一度や二度ではない。オースティンは責任を感じ、深く落ち込み、時にはふさぎ込むようなこともあったという。そんな様子を、2022年シーズンからオースティンの通訳を務めている後藤向輝氏は、脳裏に思い浮かべ、次のように語る。
「本当に野球に対して真摯ですし、毎日試合に出たい、チームの勝利に貢献したいと思っている人なんです。だから一軍のゲームを家のテレビで見ている日々は、かなりのストレスだったと思います」
一番の支えは、やはり妻の存在でした
つらい時間ほど、人間性が試される。オースティンは、自分がコントロールできないことに対して、あまり深く悩まないように意識づけをするようになったという。その手助けをしてくれたのは、家族や仲間たちだ。オースティンは柔らかい口調で言う。