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“小学生からライバル”藤井聡太vs伊藤匠「2人で41歳」はタイトル戦最年少…佐藤康光立会人が「えっ、これは事件だ」と竜王戦で驚いたワケ
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph byKeiji Ishikawa
posted2024/06/22 06:00
竜王戦第1局での伊藤匠七段と藤井聡太竜王
相掛かり模様の戦型から実戦例のある手順が進んだが、対局開始から40分後に藤井が先攻し、前例のない戦いとなった。両者は時間をあまり使わずに激しく応酬し、1日目の午後には終盤に突入するかと思われた。
しかし、難しい戦いになると、藤井は65分、49分、54分と長考を重ねた。伊藤も44分、129分、43分と長考を重ねた。
控室の予想手が外れることが多く、本局の立会人を務めた佐藤康光九段は、「意味が分からない」「えっ、これは事件だ」「私は伊藤七段の指し手の正答率は1割もない」などと声を上げた。50手目の局面で伊藤の封じ手となり、伊藤は初めての経験をした。封じ手を入れた封筒を渡すときの作法が少し違ったという。
伊藤の師匠が激励した「第6局に…」の意味
2日目も難しい戦いが続いたが、藤井が桂を巧みに使って有利な戦いを進めた。伊藤は反撃を試みたが相手玉に届かなかった。藤井が順当に寄せて勝ち、シリーズで先勝した。終局は17時2分。
藤井は終局後に「一局を通じて判断が難しい将棋だった」と語ったが、内容的には快勝だった。伊藤は「不自然な手が続いてしまい、自信のない展開となった」と語り、不出来な内容を反省していた。
伊藤七段は師匠の宮田利男八段から、「第6局に持ち込めるように頑張れ」と激励されたという。第6局の対局場は秋田県大仙市で、宮田の故郷の旧大曲市である。宮田は、師匠の自分に代わって、弟子の伊藤に故郷へ錦を飾ってほしい、という願望だった。
ただ伊藤は第2局以降に2勝しないと、第6局は実現しない。藤井に対してそれはかなり難しいが、師匠のためにも奮闘してほしい。
藤井竜王は竜王戦第1局に勝ち、3連覇に向けて好発進した。第2局は10月17、18日に京都市右京区「総本山仁和寺」で行われる。その1週間前の10月11日には、藤井の「八冠制覇」の大偉業がかかる王座戦(永瀬拓矢王座ー藤井聡太七冠)第4局が京都市のホテルで行われる。