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“小学生からライバル”藤井聡太vs伊藤匠「2人で41歳」はタイトル戦最年少…佐藤康光立会人が「えっ、これは事件だ」と竜王戦で驚いたワケ
text by
田丸昇Noboru Tamaru
photograph byKeiji Ishikawa
posted2024/06/22 06:00
竜王戦第1局での伊藤匠七段と藤井聡太竜王
多くの棋士、女流棋士が誂えた都内の呉服店に出向き、3着の和服を注文したという。着付けは店主から教わった。最初は苦労するが、練習を重ねて慣れれば、何とか様になるものだ。事前の撮影で伊藤の和服姿を見た人は、「文豪のような雰囲気がある」と語った。
ちなみに、1983年の名人戦でタイトル戦に初挑戦した谷川浩司十七世名人は、名人戦第1局まで20日しかなかったが、7局分の和服を誂えた。名人戦の対局の前には、別の対局で経験のために和服を着用した。
前夜祭で藤井、伊藤が語ったこととは
今年の竜王戦七番勝負第1局は、東京都渋谷区「セルリアンタワー能楽堂」で行われた。この数年、開幕局の対局場として定着している。
同所の東急ホテルで開かれた前夜祭で、両対局者は次のように挨拶した。
藤井「伊藤七段の将棋は、序盤は洗練されていて、中盤と終盤は鋭さと粘り強さを合わせ持っています。私と同世代なので、プロ入りした頃から注目していました。面白い将棋を精いっぱい指したいです」
伊藤「藤井竜王の将棋は、常に良い内容の将棋を指していて、手ごわい相手です。藤井将棋のことをずっと考えてきたので、結果を出したいと思います。大舞台でいい将棋を指し、見ている方に楽しんでもらいたい」
藤井は司会者から竜王戦の開催地について尋ねられると、「行ったことのない対局場があり、どのように行こうかと考えています」と語った。
タイトル戦の対局者は、飛行機や新幹線などで関係者と同行して対局場に向かうのが通例。ただ藤井は2021年に北海道旭川市での王位戦の対局で、新千歳空港に着いてから在来線を乗り継ぎ、一行とは別に現地に入った。鉄道好きだけに、「車窓から見たのどかな景色を見てリラックスできました」と感想を語った。
今期の竜王戦では第4局以降に、北海道小樽市、香川県・琴平温泉、秋田県大仙市が対局場になっている。そのどこかで在来線に乗るつもりなのだろうか……。
立会人の佐藤康光が「えっ、これは事件だ」
竜王戦第1局で恒例の「振り駒」が行われ、伊藤七段が先手番に決まった。テニスのサーブ権ほどの有利さはないが、タイトル戦初挑戦の伊藤にとって、精神的に楽になったと思う。