令和の野球探訪BACK NUMBER
追うは「東大と甲子園」の二兎…坂本勇人の恩師も太鼓判の茨城発“最強留学生スラッガー”李玟勳って何者?「いまは野球と勉強が彼女です」
text by
高木遊Yu Takagi
photograph byYu Takagi
posted2024/06/18 11:00
茨城の強豪、明秀日立高で4番を打つ台湾からの留学生・李玟勳。甲子園出場と東大合格の二刀流を目指す
台湾には日本の野球界との架け橋になっているACEプログラムというものがあり、そこで留学をサポートするチャオ・スンウェイさんと明秀日立・金沢監督に縁があり、入学。来日当初、驚いたのは豊富な練習量だったという。
「台湾の友達は“1日200本振ったら多いほう”と言うのですが、ここで一番振ったのは1日2500本です。そこまで多いことは稀ですが、冬場は毎日1500本は振っています。素振りだけの数です。台湾の友達は“信じられない”と言いますね(笑)」
最初に帰省し、日本に戻ってきた時は少しホームシックになったというが、1学年上の台湾人留学生3人に激励してもらい、同期にも黄宇耀という同郷出身者がいたこともあって、支え合いながら腕を磨いてきた。
今やチームの中心選手。一塁手としては投手や周囲に頻繁に日本語で声をかけ、金沢監督の指示の細かいニュアンスを他の留学生に噛み砕いて通訳することもある。そして4番打者として力強い打球を放ち、あらゆる面でチームになくてはならない存在となっている。
最も難しい日本語能力試験を高校入学前に合格
李と話していて驚くのは、その語学力の高さだ。インタビューをしていて、まったく難が無い。聞けば日本語能力試験で最も難しい「N1」に、来日前に既に合格していたという(N2で、現地大学の日本語学科卒業者でも全員が取れないほどだとされる)。
その頭脳明晰さに感心したチャオさんが勧めたのが東大への進学だった。李も日本への留学が叶ったからには、甲子園出場とともにもうひとつ目標を立てようと思っていたところだった。そこで東大についても色々と調べると、「この大学に入りたい」「東大のユニフォームを着て神宮球場で戦いたい」と心が躍った。
「過去、東大に台湾出身の台湾人選手はいないかと思うので、開拓者になりたいんです」と、サラリと屈託のない笑顔で話す。