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ボクシング拳坤一擲BACK NUMBER
「人生で一番ボコボコにされた」「だれか止めて…」井上尚弥とのスパーを糧に…世界王者・武居由樹がいま明かす“モロニー戦、激闘の舞台裏”
text by
渋谷淳Jun Shibuya
photograph byHiroaki Yamaguchi
posted2024/06/12 17:00
5月6日、東京ドームでジェイソン・モロニーに勝利し、WBO世界バンタム級王者となった武居由樹(27歳)。新世界王者に激闘の舞台裏を聞いた
「今のままでは勝てない」という危機感
――技術的なところもお聞きします。今回、八重樫トレーナーは「左ストレートが打てるようになった」と勝因を挙げていますが、見ていてもジャブも含めてストレート系のパンチがポイントになったように思いました。
今まで外からのパンチしかなかったんですけど、真っ直ぐのパンチを使おうという作戦でした。最近は試合でも、スパーリングでも、外からのパンチだけではだんだん当たらなくなっていたんですよ。そういう事情もありました。
――「必要は発明の母」という言葉を思い出します。これまでは外からのパンチだけでも勝ててしまうから、ストレート系が大事だと言われても、あまり使うことができなかったということですね。
そうです。それがなくても勝てた、というのはあったと思います。でも今回、モロニーとの試合が決まったときに「今のままでは勝てないな」という危機感を抱いて。だから工夫もしたし、アドバイスも聞けるようになったと思います。今までの自分はいきなり飛び込んで、という感じだったので、前の自分だったらやっぱり勝てなかったと思います。
――ジャブと左ボディの組み合わせが効いていました。
思った以上に手が出たし、ジャブは当たりました。ただ、予想していた通り、試合中は「うまく当てさせてくれないな」という印象でした。左ボディブローも当たってはいるんですけど、深く刺さっている感じはなかったです。
――いずれにしても武居選手が主導権を握り、試合を進めました。途中でモロニー選手が出てきましたけど、どのように感じていましたか。
効いたパンチはなかったし、「これをもらったらヤバイ」という怖さはありませんでした。ガツーンというのはなかったので。
大ピンチの最終ラウンドの真相「欲が出てしまって…」
――そして12ラウンドです。ガス欠であわや逆転負けというピンチを迎えましたが、最終回が始まる段階で予兆のようなものはありましたか。